道中 ページ10
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「───泣きそうな
「何で、さねみんが此処に」
「…胡蝶から連絡来てよ。1人で夜道を歩くなんざ流石に危ねェだろ」
パーカー姿というラフな格好の彼が少し息を切らしてそう言った。そんな姿を私はただただ見つめる。
わざわざ、走って迎えに来てくれた?気まずくて、全然話してないのに。そんな曖昧な関係なのに、私なんかの為に。
「つーかお前、こんな夜遅くにセーター1枚って馬鹿だろ。あとネクタイ曲がってんぞォ、今日1日それで過ごしてたのかよ馬鹿野郎」
私の方に近付いて、着ていた白いパーカーを私の肩に乗せた後私のネクタイをまっすぐ直してくれた。馬鹿だ、馬鹿だと何度も私にそう言いながら彼はいつものように私の身だしなみを整えてくれる。
久しぶりだ、この感覚。この心地良さ、懐かしさ。
きっと周りからしたらたった数日の話してないくらいで、って思うかもしれない。数日程度なんて思うかもしれない。
─────でも、私は違うんだ。
3年間彼の隣で毎日眠っていた私は、もう彼の隣に常に居なきゃ駄目な身体になってしまったんだ。
泣きそうになる顔を堪える。さねみんはそんな私の顔を見て、悲しそうな表情を浮かべながら私の頭を撫でた。
「───────悪かった」
彼はそれだけ告げた。その一言だけ。だけどその一言が私にとってどれだけ悲しい言葉が言わずもがな知っていた。
「…謝ったら、」
「あ?」
「謝ったら…駄目だよ」
「……何でだよ」
何でって、そんなの決まってるじゃんか。
「謝ったら…さねみんがした事、まるで私が嫌がったように聞こえるじゃん、そんなの…駄目だよ」
精一杯の声でそう言った。ああ、さっきまであんなに眠かったのに。どうやら眠気が飛んでしまったようだ。彼は私がいつも摂取しているカフェイン以上の効果を発揮してくれるらしい。
「…期待するぞ?そんな事言われたら」
「したらいいよ。その為に会いに来てくれたんでしょ」
「…俺、言ったよな。"男"として俺を見ろって」
彼が静かにそう言う。私は黙って頷く。誰も居ない道中、見つめ合う2人。
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ポンコツ(プロフ) - すっごいドンピシャに好きな作品でした!! (2022年11月8日 18時) (レス) @page45 id: 16f55af0f9 (このIDを非表示/違反報告)
澪奈(プロフ) - 完結おめでとうございます!とっても面白かったです!!次回作も楽しみにしています! (2021年3月9日 21時) (レス) id: 20f17d6d24 (このIDを非表示/違反報告)
凪子(プロフ) - さねみんなら、一生お世話されたい!!楽しい作品だったぜィ(^^) (2021年3月9日 21時) (レス) id: 33c3d87eb8 (このIDを非表示/違反報告)
蓮(プロフ) - 完結おめでとう!!とにかく可愛らしくて勝手に2人の保護者面して見守っておりました…。ゆっくりと2人のペースで進んでる姿が本当に見えてきてこの先も笑い合っていくんだなって思うと本当に素敵な2人!最高なお話をありがとう!次回作もゆっくり頑張ってね!!! (2021年3月9日 20時) (レス) id: 1ceb99e799 (このIDを非表示/違反報告)
いくま(プロフ) - もしゃこうさん» コメントありがとうございます!この作品を最後まで読んでくださり本当に嬉しいです、、!次回作も見てくださるんですか!?ええ嬉しい涙ありがとうございました、! (2021年3月9日 20時) (レス) id: de9f3ec973 (このIDを非表示/違反報告)
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