へいさねみん【不死川実弥】

母親 ページ19

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｢なんだかんだAの母さん見るの初だなァ｣
｢あれ、そうだっけ｣
｢あァ｣

　俺がケーキでAがパンを持ち、空いた片方の手はお互いの手を繋いだまま。

｢私はお母さん似かも｣
｢妹は？｣
｢かなりお父さん｣
｢…お前の家族の立ち位置理解したわァ｣

　そんなたわいない話をしているとあっという間にAの家のマンションに到着していた。するとマンションの前で大荷物を抱えてウロウロしている人影を発見する。その人は茶封筒を沢山手に持っており、その封筒から何やら書類が出そうで危なっかしい感じだった。大方会社員だろう、スーツ姿だった。


｢あ、お母さん｣
｢は？｣


　隣に居た彼女がそう呟いた。Aの声があの女の人に届いたらしくその人は俺達の方へ思いっきり振り向く。その瞬間、抱えていた茶封筒の中から書類がばら撒かれてしまう。
　思わず俺は走ってその人に近付き空中に舞っている書類を掴む。幸いにも一部しか落ちなかった為大惨事には至らなかった。


｢だ、大丈夫ですかァ｣
｢あらー、わざわざ、どうもどうも｣


　どことなく聞いた事のあるような口調。茶髪のゆるい巻き髪が風に揺れて、俺が掴んた書類を受け取るその人。


｢お母さんなんでそんな大荷物なの｣
｢A？あぁ成程、じゃあ貴方がレ点君ね〜｣
｢すみません不死川です｣


　レ点君ってなんだよ。確かに漢文みたいな苗字してるけども。というかこの人、Aそっくりじゃねェか。見た目も眠そうな目付きで、髪色や髪型こそ違うが喋り方や雰囲気はほぼAそっくりだ。



　─────成程、遺伝子を感じる。



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｢アオイただいま〜。あ、いい匂いする｣
｢お母さんおかえりーって、お姉ちゃん達も一緒だったの？｣
｢さっきそこで会ってね〜｣

　A母の荷物を俺が持ち、家の中に入る。家の中はビーフシチューの良い匂いが充満しており、嗅ぐだけで空腹感が倍増する。A妹の料理は上手いと彼女から聞くがどうやら本当だったようだ。


｢不死川さんすみません…｣
｢いや、構わねェよ｣
｢あの…ご存知かと思いますが、姉と母は同じ括りでお願いします…｣
｢何となく分かった｣


　妹は父親似、つまり父親と妹だけはマトモなんだな。というかどこまでもしっかりし過ぎてどっちが姉か…いや、どっちが母親か分かりゃしねェなァ。
　俺が買ってきたケーキを机に置き、パンを切って、出来上がったシチューを器に注いで並べる。妹と俺で。


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