彼女 ページ49
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「えーと、ふしがわ…じつ、…さね、や?」
「しなずがわさねみ」
「あぁ、漢文のレ点系男子ね」
「どんな男子だァ」
高1の時、隣の席のソイツはそう言っていた。気だるそうにヘラヘラと笑いながら。
「不死川君って傷多いね。あ、分かった」
元ヤンだった俺は、昔喧嘩で作った沢山の傷を見てソイツは
「顔面犬に噛まれたんだ」
「どんな噛まれ方したらこうなるんだよ」
─────ソイツは、とんだバカだった。
「あー不死川君。おはよ」
「眠っそうな
「これが通常運転なの、…駄目だ歩けない」
そう言いながら俺の方に全体重を乗っけてくるソイツに青筋を立てながら声を荒らげる。
「自分で歩けェ!」
「駄目だ〜重力が私を愛し過ぎている〜」
「意味分かんねェ事言ってんじゃねェ!」
もう瞼は閉じきってあと数分したら寝るんじゃないかと言う様な口調で彼女は俺から離れようとしない。
「あ"〜ッ!この眠たがり女ッ!」
「眠〇打破しか勝たん〜」
「全然打破出来てねェだろうがァッ!」
そう言って無理矢理彼女を片手で持ち上げてズカズカと1階の俺達の教室までソイツを連れて行く。周りの目が気になって仕方ない。
「え、めっちゃいいじゃん。目開けたら自分の席に居るって最強?」
「自分の足で歩けやァ」
「不死川君、私の専属タクシー運転手にならない?」
「馬鹿野郎」
"君いいね"と俺に言いながらそう言ったソイツの笑顔を、俺は3年の今になるまで決して忘れる事はなかった。
「不死川、さねみ……さね、み、…うーん、あ、さねみん」
「はァ?」
「今日から君はさねみんだ」
「ペットに名前付ける様な感じで呼ぶんじゃねェ」
高2の春、クラス替えしても隣に居たソイツ。またあの時と同じ笑顔で俺の名前を呼ぶソイツの顔を、俺は3年の今になるまで決して忘れる事はなかった。
"さねみーん"
なんだよ
"眠いから1限は寝るね、…あ〜7限まで寝るね"
結局全部寝てんじゃねェか
"寝る寝る寝るねってお菓子良いよね、モロ私じゃん"
アホか
"あー、さねみんの隣に居ないと私駄目だな〜"
──────じゃあ、ずっと居ろよな
そんな言葉が、言えたらいいのに。
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"へいたくしー"
高校1年生から3年生まで、毎日靴箱で聞こえてくるその声。
そんな声は、もう俺の耳には聞こえない。
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うぇすとり?ぁー(プロフ) - 前編読み終わりました!いくまさんのギャグセンス最高でした!へいたくしーが前編の最後のシーンでは言えなくなってしまう甘酸っぱい展開最高でしたっ! (2021年10月13日 22時) (レス) @page50 id: 9275faa17d (このIDを非表示/違反報告)
最高 - これはッ!!!絶対にもッッッッと伸びるべきです(迫真)本当に面白いです可愛いです最高です (2021年3月18日 16時) (レス) id: f0ef8aefa1 (このIDを非表示/違反報告)
いくま(プロフ) - ルナさん» コメントありがとうございます。最初、田中くんの漫画を読んでこんなヒロインを書きたいなと思い執筆させて頂きました。お気付きになられたとは笑これからの展開はオリジナルが多いのでお時間あれば続編も是非ご覧になって下さいね! (2021年2月27日 23時) (レス) id: de9f3ec973 (このIDを非表示/違反報告)
いくま(プロフ) - yuenさん» コメントありがとうございます。作品を好きと言って下さり嬉しい限りです……!続編もよろしくお願いいたします! (2021年2月27日 23時) (レス) id: de9f3ec973 (このIDを非表示/違反報告)
ルナ - 田中くんはいつもけだるげだ!! (2021年2月27日 14時) (レス) id: 72ff3a10a5 (このIDを非表示/違反報告)
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