梅雨 ページ26
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季節は夏手前の6月。梅雨の時期。時期が時期だから仕方ないと分かっていても毎日雨が続くと気が滅入る、そんな季節。傘を閉じて傘立てに放り込み、濡れた靴を入れ上履きに履き替える。空気もジメッとしていて蒸し暑い。立っているだけでイライラしてしまいそうだ。
「さねみん、おはよ」
「おー、」
聞き慣れた声に反応し俺は振り向く。が、しかし。
「いやー最近湿度が高くてほんと参っちゃうね」
「湿度以前の問題だろ。ビチャビチャじゃねェか」
全身ずぶ濡れのAがそこに立っていたのだった。
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今日アオイが委員会の仕事で先にいつもより早く家を出てったんだけど、その時に降水確率80%だから傘いるよって言われてさ。
だから一応持っては来てたんだけど家出た時はほとんど降ってなかったんだよね。
傘ってボタン押したらバサァッ!って結構激しめに開くじゃん、それが私苦手でさ〜。小雨だし別にささなくてもいっかなって思ったら何か傘をさすタイミング失っちゃって。
「───気付いたら豪雨でびちょ濡れってよくあるよね」
「ねェよ」
傘の役目を果たしてやれよ。
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「そもそも傘自体、好きじゃないんだよね」
ずぶ濡れの制服から俺の体操着を身にまとった彼女はため息をつきながらそう言っていた。
何故コイツが俺の体操着を着ているのかは自明の理である。コイツは体操着を忘れたようだ。そこまで濡れていないスカートをとりあえず干して、救いようがないシャツや靴下はビニール袋に仕舞う。
「傘に好きも嫌いもあるかァ、濡れたくねェからさすんだよ普通は」
「でもあると邪魔くさいしよく置き忘れるし良い事ないよ傘って」
「…まァ、一理あるなァ」
"でしょ〜"と言いながらデカすぎるジャージを袖をプラプラさせているA。不覚にも可愛いなんざ思ってしまう自分の煩悩を無理やり消し去る。
「ジメジメしてて何かダルいし…なんか良い方法ないかな〜」
「お前がダルいのはいつもじゃねェか」
すると"あ、そうだ"と呟いた彼女は急に席を立ちスタスタと歩いて教室から出ていってしまった。なんだなんだと思いながら教室の扉を見つめているとジャージ姿の彼女は再び扉を開けて自分の席に戻ってきた。
「よもや!神崎に呼ばれて来たのだが一体何の用だ!!!」
「ジメジメした季節を熱気で乾かそう」
「今すぐ帰してこい」
俺がそうツッコミを入れると煉獄とAは2人して「むぅ…」と唸っていた。仲良しかよ。
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うぇすとり?ぁー(プロフ) - 前編読み終わりました!いくまさんのギャグセンス最高でした!へいたくしーが前編の最後のシーンでは言えなくなってしまう甘酸っぱい展開最高でしたっ! (2021年10月13日 22時) (レス) @page50 id: 9275faa17d (このIDを非表示/違反報告)
最高 - これはッ!!!絶対にもッッッッと伸びるべきです(迫真)本当に面白いです可愛いです最高です (2021年3月18日 16時) (レス) id: f0ef8aefa1 (このIDを非表示/違反報告)
いくま(プロフ) - ルナさん» コメントありがとうございます。最初、田中くんの漫画を読んでこんなヒロインを書きたいなと思い執筆させて頂きました。お気付きになられたとは笑これからの展開はオリジナルが多いのでお時間あれば続編も是非ご覧になって下さいね! (2021年2月27日 23時) (レス) id: de9f3ec973 (このIDを非表示/違反報告)
いくま(プロフ) - yuenさん» コメントありがとうございます。作品を好きと言って下さり嬉しい限りです……!続編もよろしくお願いいたします! (2021年2月27日 23時) (レス) id: de9f3ec973 (このIDを非表示/違反報告)
ルナ - 田中くんはいつもけだるげだ!! (2021年2月27日 14時) (レス) id: 72ff3a10a5 (このIDを非表示/違反報告)
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