風邪 ページ19
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朝イチで目の前に映る彼女の顔を見て俺は異変に気付いた。
「お"は"よ"ぅ"、さ"ね"み"ん"」
「完璧風邪引いてるなァA」
マスクをした彼女は酷い声で俺に話しかけてきた。
ゴホゴホと咳をしていて、眠そうな目はいつにも増して閉じかけだった。
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「そんな状態なのに学校に来たのかァ、お前なら絶対休むだろ普通」
「う"ん、でもアオ"イも学校だし親も"仕事だから"1人で居る"のも何も"出来ない"し来た"」
「声ガラガラだなァ」
「喉だけ痛い"」
しんどそうにしている彼女を見ながら「もう喋んなァ」と言ったのだった。
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【さねみん、水筒忘れた】
「じゃあ自販機行くかァ」
【いこーいこー】
喉を痛めて喋るのが億劫になった彼女はノートで筆談する事になった。と、言っても基本的に彼女と話すのは俺くらいしか居ないからそこまで不便そうにはしていない。
【風邪引いても良い事ないね。昔は学校休んで寝れるから嬉しかったけど】
「お前学校あっても寝てるだろ」
【その通り】
自販機前で彼女は何を買おうか迷った感じで腕組みをしていた。
「温かいモンにしとけ」
【え、なんで】
「喉痛ェんだろ」
そう言って俺は温かいお茶のボタンを押して彼女に"ほらよ"と渡した。
【お金】
「病人は黙って奢られてろ」
【ありがとうお母ちゃん】
「誰がお母ちゃんだァ」
彼女の額にデコピンをして俺は自分用に紙パックのいちごオレを購入した。
【相変わらず好きだねいちごオレ】
「悪ィかよ」
【悪いなんて一言も言ってないよお母ちゃん】
「お母ちゃんネタ引きずんな」
マスクを外して温かいお茶をちびちび飲んでいるAの隣で紙パックにストローをぶっ刺した。甘いいちごの風味が口の中いっぱいに広がる。つまり美味い。
【それ美味しいの?】
「飲んだ事ねェのかァ?」
【うん】
「マジかよ…」
確かに映画の帰りに行ったカフェの時もコーヒーを飲んでいたしアイツが飲む物と言ったら妹が淹れたお茶くらい。お茶かコーヒーしか飲まねェのかよ。
【一口頂戴】
「……は?」
【あ、風邪移るかな】
「いや…平気だけど、」
平気だけど平気じゃない。そんな事を言いかけたが彼女は既に俺の持っていたいちごオレを口にしていて。
【甘いわー、さねみん好きそー】
「……まァな」
いや別にそんな意識してねェし、回し飲みとか友達同士で普通にするし何も思わねェけど。もう一度口にしたら謎にさっき飲んだのより甘く感じたのだった。
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うぇすとり?ぁー(プロフ) - 前編読み終わりました!いくまさんのギャグセンス最高でした!へいたくしーが前編の最後のシーンでは言えなくなってしまう甘酸っぱい展開最高でしたっ! (2021年10月13日 22時) (レス) @page50 id: 9275faa17d (このIDを非表示/違反報告)
最高 - これはッ!!!絶対にもッッッッと伸びるべきです(迫真)本当に面白いです可愛いです最高です (2021年3月18日 16時) (レス) id: f0ef8aefa1 (このIDを非表示/違反報告)
いくま(プロフ) - ルナさん» コメントありがとうございます。最初、田中くんの漫画を読んでこんなヒロインを書きたいなと思い執筆させて頂きました。お気付きになられたとは笑これからの展開はオリジナルが多いのでお時間あれば続編も是非ご覧になって下さいね! (2021年2月27日 23時) (レス) id: de9f3ec973 (このIDを非表示/違反報告)
いくま(プロフ) - yuenさん» コメントありがとうございます。作品を好きと言って下さり嬉しい限りです……!続編もよろしくお願いいたします! (2021年2月27日 23時) (レス) id: de9f3ec973 (このIDを非表示/違反報告)
ルナ - 田中くんはいつもけだるげだ!! (2021年2月27日 14時) (レス) id: 72ff3a10a5 (このIDを非表示/違反報告)
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