i・ko・i [12/25更新] (ページ36)

今日:1 hit、昨日:4 hit、合計:43,180 hit

36*〈10/3〉ページ36

同期会がお開きになって、その帰り道。

よく言い出せたなって櫻井くんが穏やかに笑う。

櫻井くんのお陰だよ。私、前に進みたいから。
ああ、彼氏が欲しいとかって意味じゃなくて、着実に前を向きたいって意味ね？
みんなが私の為に優人に対して怒りを感じてくれて嬉しかったの。
一人じゃないよね。ちゃんと味方がいたよね・・・

泣きたくないのにな。
涙がぽろっと零れる。

櫻井『吹っ切れてねーじゃん・・・無理すんなよ・・・』

ごめん。
そう零した私に、座ろっかって、櫻井くんは私の袖を摘まんですぐ側にある公園に入っていく。

自販機の前で何飲む？って聞かれて、レモンティーって答えてベンチに腰掛ける。
手渡されたペットボトルは温かい。

多分ね、吹っ切ってるんだよ。でもね、優人の言葉に傷付いて落ち込んだ記憶だけが残ってる。やっぱりね、どんなに私を評価してくれる人がいても、"こんなに可愛げのない女だとは思わなかった"って一言が、ふとした瞬間に浮かんでくる。

好きだったんだよね・・・
すごく好きで、嬉しかったの。

結婚しようって、ココで再来年の一月二十四日にガーデンウェディングをしようって式場の入口でしてくれたプロポーズが嬉しかった。

ずっと一緒に居たいって思って、プロポーズを喜んで受けて、腕に嵌めてくれた腕時計が大きくて。
バンドの調節して貰わなきゃダメだね、格好悪いなぁオレって笑った優人がかっこよかった。

そんな過去、忘れたいのにね。

黙り込んだ私の頭を櫻井くんはポンポンと撫でた。

櫻井『別に忘れなくていいんじゃねーの？
何年付き合ってたんだっけ？』

「六年。」

櫻井『それだけの想いと思い出があるんだろ？
いいじゃん。忘れてなくても。
仕方ねーよ。長ぇよ、六年って。

マミもホントは太刀打ち出来なかったんだよ。だから最低な奥の手を使った。
それくらい魅力のある男に愛されてたってことだろ？

まぁ、その分、自己愛の強すぎるクソみたいな部分も多くて、それをうまく隠し切れなくて、結局は終わるべくして終わったんだろうけど。
それでも自分の人生を否定してやるな。二十代の半分以上だぞ？』

頭に乗せた手で私の顔を上に向けて、

櫻井『な？
傷付いてるおまえごと受け止めて愛してやれ。
おまえだけは自分自身を否定するな。
簡単に忘れられるほど適当に過ごしてきた六年じゃねーだろ？』

優しい声。