i・ko・i [12/25更新] (ページ16)

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最寄り駅の一駅手前に差し掛かった頃、

櫻井『そういえばおまえ、一課の女に色々言われてたぞ？』

と、櫻井くんが切り出す。

何を？

櫻井『松本さんに対して失礼だとか色々。まぁフォローはしたけど。

社内で、特に営業部内であの人を敵に回すと孤立する恐れがあるから、だから"控えろ"って、今朝、オレは言ったと思うんだけど』

あー・・・コレは久々に面倒くさいやつだ。

櫻井『イケメンは正義なんだよ・・・面倒くさいって顔すんな』

バレてる。

「わかるけど・・・仲良くしたら文句言われて、拒絶しても文句を言われる場合、どうすればいいの？」

櫻井『何？どういうこと？』

うーん、全部言うべきか。潤くんの不機嫌に巻き込んじゃってるし。と思ったタイミングで駅に着いたので、二人でホームに降り立つ。

「初対面じゃないのよ、課長。

しかも、私の元婚約者のことも知ってる」

櫻井『は！？』

「声大きいよ」

大きな声が出ても仕方のないことを言ったのは私だけど。

改札を出て、櫻井くんは口を開く。

櫻井『"元"って。つーかそもそも婚約って、』

「うん。前に私が、ブランド物の腕時計を着けてたの、覚えてる？」

櫻井『ああ・・・黒蝶貝の文字盤の限定品だよな？

雑誌で見て一目惚れして探したけど、メンズは完売してて買えなかったからよく覚えてる』

「あれ、婚約指輪の代わり。課長はそのことも式が一月だったのも知ってた。

で、三月なのに結婚指輪をしてない、更に腕時計もしてない。

つまり結婚がダメになったのはわかるけど、破談になったことを知らされていなかった上に初対面の振りまでされた。そりゃ怒るよね」

櫻井くんは頭を抱える。

櫻井『ちょっと待て、情報量が多過ぎる。

え？あの時計、確か一昨年の年末じゃなかった？

結婚の予定を伏せたまま営業に来たってこと？』

そんなワケないでしょ(苦笑)。

異動の話が出てるって面談した時に、ちゃんと室長には言ったよ。子供も三十くらいまでは考えてないから今は仕事したいって。
それは相手と決めたことだって言うと、異動先が営二ってわかった。

それで、私は営二で頑張りたいけど、それでも私を使ってくれますかって営業の部長にも聞いた。
報告してないはず無いでしょ。

マンションに着いて、

櫻井『ゴメン、着替えてからそっち行っていい？』

「うん」

エレベーターで一旦別れた。