継子への当たりが強いのでは？【時透無一郎】

継子と蝶屋敷 ページ7

『御免下さーい』


ガラガラ、と戸を開けて、全体に聞こえるよう、師範の代わりに声を上げる。

昔はあまり大声を出すのは得意ではなかったが、口数の少ない師範の代わりに出し続けていたらいつの間にか十分に出せるようになっていた。

今だって、何も語らないまま、開けた戸の隙間を縫って、テキパキと履物を脱ぐ師範の姿がある。



「時透様に神無木様。今日はどうなされましたか？」


『あ、アオイさん。突然すみません。』



実は…と師範の怪我の事を伝えれば、「では、時透様は此方へ。」とアオイさんに案内されていく。


さて、どこで待っていよう。



「「「Aさん！」」」



考えながら意味もなく歩いていると、後ろからグイッ、と引っ張られ「うわっぷ」と変な声を上げてしまった。


その勢いに耐えながら後ろに視線を送れば、可愛らしい女の子達が、私の裾を握っていた。



『おお！三人共お久しぶり！元気にしてた？』


「はい！」

「元気にしてました！」

「お久しぶりです！」



三人の元気の良い返事に満足し、うんうんと頷く。

よしよーしと三人の頭を順番に撫でれば、嬉しそうに花を咲かせた。


こんなにも癒されていいものなんだろうか。



『よーし、そんな三人には私から御褒美をあげちゃおーう！』



彼女達の視線に合わせてしゃがみ、じゃーん！と懐から飴玉を三つ取り出せば、キラキラと輝かせる6つの目。



『胡蝶様達には内緒だよ？』


「「「！はい！！」」」



しーっ、と口元に人差し指を当て、片目を瞑れば元気に返事をしてくれた。


うん、なんて可愛いんだろう。そう思いながら私はぎゅーっ、とみんなを抱きしめるのだった。



(飴をあげたことが、胡蝶様どころか師範にまでバレるのは、そう遠くない未来なのでした。)

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