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Aの心情も僕達二人の行く末も、この天眼は照らしてくれないのだ。
肝心な時にいつも未来を濁らせる。
いや、違う。
僕自身の未来を見たく無かった。婚約者と家庭を築く未来が想定できなかった。ゲキウの隣に居るべき人間は僕じゃないと、そう悟っていた。
Aが傷つく姿を見たくなかった。その先の顛末でさえも。Aが荘園を後にする未来もその後のことも、彼女に関する未来全てから目を背けたかった。
何より、相手が女であれ男であれ、Aが他の誰かと幸せになる姿を見たくないと思った。
「.......意地悪だなAは」
天眼のせいなどではない。紛れもない僕が、そう願ったのだ。
婚約者も義両親も金も、名誉も、どうでもいい。
あまつさえ、Aの隣にいるのは僕でありたいと願った。
「本当は気が付いているんだろう、僕が君をどういう目で見ているのか」
気が付かないはずがない。
本人に手を出そうとしたのだから。
それでも君は否定するのか。
「わかりません」
僕が未だにゲキウを信じていると、そう言うのか。
「私たち、やっぱり良い友人になんてなれませんでしたね」
安物のちっぽけな指輪を僕がまだ大切にしていると思っているのか。
「クラークさんの言う通りだった。やっぱり私たち、一緒にいたらいけないんだ」
僕がどれだけ彼女の言葉を否定しようと、Aが発した声は呪いのように僕の体へ溶け込んでいく。どろり、どろりと黒い液体が脳を満たしている用だった。
愛、ゲキウ、そして幸せな未来―――。
それら全てがタチの悪い呪いに思えた。
「あ、う、A」
「無駄な話し合いは時間の無駄です、何の解決にもならない」
嗚呼神よ、貴方は乗り越えられる試練しか与えないのでは無かったのですか！
「聞いてくれ！僕は、」
「僕は――。何ですか」
いつもそうだ。いつも言いたいことが言えないんだ。
今日こそは今日こそはとずっと腹の奥底に眠るせていたせいで、肝心な時にこの口は！脳は！いつも、いつも.......。
「あ、ぼ、僕、僕は！」
僕は君を！！
「.......止めましょう、貴方が辛いだけだ」
その時確かにAは僕を哀れんだ。眉を寄せて、小さな口を固く結んで僕を見ている。
頼りなくて不甲斐ない、そんな自分の愚かさに胸にいっぱい灰が詰まっているような気分になる。
ただの錯覚なんかじゃない。
これは紛れもない呪いだ。
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イキテル(プロフ) - 猫夜桜((シラキさん» とても嬉しいコメントありがとうございます。閲覧感謝です！ (2020年4月2日 1時) (
レス) id: eab5f6dd9c (このIDを非表示/違反報告)
猫夜桜((シラキ - 何も言えない、言いたいんだけど語彙力が無さすぎて、あと文才ありまくりプロの方ですか← (2020年4月2日 0時) (レス) id: 27d48dc6f8 (このIDを非表示/違反報告)
イキテル(プロフ) - ハルさん» コメントありがとうございました、今後の励みになります。感謝です！ (2020年3月25日 0時) (レス) id: eab5f6dd9c (このIDを非表示/違反報告)
ハル - 読み易い！文が綺麗！ (2020年3月24日 15時) (レス) id: 121cd7f10a (このIDを非表示/違反報告)
もも(プロフ) - ご返答ありがとうございます、了解しました！貴方様の作るお話が大好きなのでこれからも頑張ってください！応援してます！ (2020年1月30日 10時) (レス) id: 48f80f9c86 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：イキテル | 作成日時：2019年12月26日 2時
