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「ハーブティーは好きかしら」
「え？」
「こうして話すのも久しぶりでしょう、だからお茶でもと思って」
戸棚の横で熱い蒸気を漏らしていたポットの湯を注ぎAの目の前にカップ差し出すと、それを受け取ったAは不思議そうな顔をしたまま、スンと鼻を鳴らした。
「ラベンダーの香りがする」
頬を色付かせて微笑むその姿は、荘園を訪れた時とはまるで違う。別人を見ているような気分だ。
テーブルの上に数枚絞り出しクッキーを並べると、ハーブの香りに混ざって微かにバターの香ばしい香りが漂い始める。
「貴女にクッキーを渡した時があったでしょう」
あの時のような貼り付けた作り笑いの面影はどこにも感じられなかった。
「私あの時浮かれていたのよ。Aと仲良くなりたくて.......それにお菓子作りなんて子供の時以来だったしね」
しかしその後Aが体調を崩したと小耳に挟んだ時は心底後悔した。根拠はなかったが、自分のせいだと直感的に感じ取ったのだ。
けれどAが元々食べ物を受け付けない体質だと気がつくのにそう時間はかからなかった。普段の食事の様子と、医師の勘ってやつ。
ふとAは困ったように眉を下げて小皿に並べられたクッキーを一つ、安定しない指で持ち上げた。
「どうして今その話を？」
素朴で至って普通な絞り出しクッキー。シキが口に入れる前に、細い指から取り上げて代わりに私が食べてやると、彼女はますます驚いたような顔を作った。
「時々子供みたいな事をしますよね.......」
「あら、呆れた？」
「.......いいえ」
私が作ったクッキーより何倍も美味しい、市販のクッキー。本当は安物なんかじゃないのかもしれない。
「人と近づきたいって思う時程、空回りな行動をしてしまうものなのよ。クラークさんがAの背中に思わず虚言を吐いてしまったのも、そのせいかもね」
だから気にすることも悩む事もないのよ。彼に対しては可哀想だと言ったけれど。
嗚呼、なんて意地悪な性格なのかしらエミリー・ダイアー！本当はこの手の恋路が大好物なクセに。素直にアドバイスすらしてやらないなんて。
「恋人というのは何も性行為をするだけの関係ではないわ。きっとAが考えているものより身軽で気楽なものよ」
少しからかいすぎたかとAの顔を横目で見るが、動揺の表情すらなく彼女は曖昧な返事をしながら一口ハーブティーを啜ったのだ。
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イキテル(プロフ) - 猫夜桜((シラキさん» とても嬉しいコメントありがとうございます。閲覧感謝です！ (2020年4月2日 1時) (
レス) id: eab5f6dd9c (このIDを非表示/違反報告)
猫夜桜((シラキ - 何も言えない、言いたいんだけど語彙力が無さすぎて、あと文才ありまくりプロの方ですか← (2020年4月2日 0時) (レス) id: 27d48dc6f8 (このIDを非表示/違反報告)
イキテル(プロフ) - ハルさん» コメントありがとうございました、今後の励みになります。感謝です！ (2020年3月25日 0時) (レス) id: eab5f6dd9c (このIDを非表示/違反報告)
ハル - 読み易い！文が綺麗！ (2020年3月24日 15時) (レス) id: 121cd7f10a (このIDを非表示/違反報告)
もも(プロフ) - ご返答ありがとうございます、了解しました！貴方様の作るお話が大好きなのでこれからも頑張ってください！応援してます！ (2020年1月30日 10時) (レス) id: 48f80f9c86 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：イキテル | 作成日時：2019年12月26日 2時
