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クリスマスの準備は順調に進んでいた。
数日後のパーティーの為に食堂は飾り付けられ、食品庫には高そうな酒まで用意されている。
万事順調といえばそう見えるが、ふとAの事を思い出すと誰もが心持ちない顔をした。
ある時、自分のせいだとトレイシーが言った。ここ数日Aが倒れてから食事もマトモに喉を通らないらしい。
同じゲームに出ていたんだ、無理もない。
「誰のせいでもないだろ、クリスマス当日には目を覚ますさ」
そう言って決まって彼女を慰めていたのはナワーブだ。
死んでいく仲間の顔をこれ以上見たくないと彼が嘆いていたのはいつだったか。
平気な素振りをわざと見せるナワーブに無性に腹が立ってしまう程には、きっと僕も平常心を保っていなかったのだろう。
だからわざと食品庫の酒瓶を割ろうとした。
「おい、割るなよ」
見透かしていたかのようにピアソンさんが強く僕の肩を握った。
「Aがお、起きるまで、取っておかないと」
「Aは好んで酒を飲んだりしません」
食べることも、香水も、ましてや甘い洋菓子さえも。
女の子は砂糖菓子で出来ているという詩を聞いたことがあるが、Aを作り上げているものにきっと砂糖は微塵も使われていない。
僕がそう言うと、ピアソンさんは「はあん」とよく分からない相槌をして僕の顔をジロジロと見た。
「そ、そいつは、楽な女を選んだもんだな」
「楽な女？ Aがですか？」
「ああ、酒癖もな、無いしな。それに女の好みをいちいち把握して、き、機嫌を伺う必要もない」
それほど楽な女はいないさ、とピアソンさんは口角を上げた。
「.......そんなんじゃ、ないです」
贈り物をする、という面では確かに楽かもしれない。
それでもAは周りの女性とは違った。
女らしいなどという曖昧な言葉にAを例えたい訳では無いが、きっと現在の彼女は彼女自信が望んでいない姿だ。
女という性別を嫌った、女である自らを怨み呪った。
「Aはもっと...幸せになるべきなんです」
「そうかならこの酒瓶は尚更し、閉まっておかないといけないな」
僕の手から酒瓶を奪い取ると、ピアソンさんは元あった場所にそれを戻した。
「あ、案外ひょっとした事で好きになるかもしれない」
グリグリと乱暴に僕の頭をかき乱したピアソンさんは、「だから起きるまで待ってやろう」と優しく笑った。
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イキテル(プロフ) - 猫夜桜((シラキさん» とても嬉しいコメントありがとうございます。閲覧感謝です！ (2020年4月2日 1時) (
レス) id: eab5f6dd9c (このIDを非表示/違反報告)
猫夜桜((シラキ - 何も言えない、言いたいんだけど語彙力が無さすぎて、あと文才ありまくりプロの方ですか← (2020年4月2日 0時) (レス) id: 27d48dc6f8 (このIDを非表示/違反報告)
イキテル(プロフ) - ハルさん» コメントありがとうございました、今後の励みになります。感謝です！ (2020年3月25日 0時) (レス) id: eab5f6dd9c (このIDを非表示/違反報告)
ハル - 読み易い！文が綺麗！ (2020年3月24日 15時) (レス) id: 121cd7f10a (このIDを非表示/違反報告)
もも(プロフ) - ご返答ありがとうございます、了解しました！貴方様の作るお話が大好きなのでこれからも頑張ってください！応援してます！ (2020年1月30日 10時) (レス) id: 48f80f9c86 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：イキテル | 作成日時：2019年12月26日 2時
