生きる 【3A】 2

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茅野side___


「どんな存在……ねぇ……」



そう呟きながらAがいるであろう準備室の方を眺める先生は、


とても
もの柔らかで、かつ切ない表情をしていた。




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こんな顔してる先生、初めて見た。



今までどんなに生徒にキツく当たられても

悲しい顔も、

怒ったような顔もせず、

無表情だった先生。



……こんな優しい顔するんだ。




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すると先生は徐ろにビデオカメラを取り出し、

こちらに見せた。




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そこに映っていたのは、


美術室で一人絵を描くAだった。



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Aは筆を止めて、カメラより少し上を見る。



___『あっ！ココ！

ココの、明暗のタッチが凄く難しいんですよ！

.……え！？見てっ！』



Aが目をパチパチさせながら手のひらの側面を此方に見せると、

絵の具がべったりとついていた。




話に夢中で、絵の具塗りたてのところに
手をついてしまったらしい。




Aは悪戯っぽく楽しそうに笑いながら、

___『……ついちゃったし！』



とおどけて見せる。




.



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その愛らしい笑顔につられそうになったところで、



先生は言う。





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「……景山が自 殺した後、

Aも自 殺しようとしたって


聞いたことあるか？」




「……はい。」





"AAが自 殺未遂を起こした"



とはその頃噂でよく回っていた。




結局真偽は分からなかったし、

Aと友達になっても特にこのことは問い詰めなかった。



……いや、問い詰められなかったのだ。



.




「……あれは、本当だ。」



「……えっ、」



「これは、そのAが自 殺しようとした時から

2日くらい経った時かな。」




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澪奈に向けて笑顔を見せていたAは何度か見たことがあったけど、

澪奈がいなくなってから

バッタリと彼女の笑顔は見なくなった。

それよりか教室にいる時は少なく、

教室に居たことがあっても、

笑顔は勿論、生き生きした様子も見たことがなかった。






.





光をなくした目は虚ろ、
いつも何かに取り憑かれているようで。




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そのとき、Aは美術室ではこんな風に笑っていたんだ。




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私の知らない、Aの過去。

. (一部回想)→←___作者より___

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