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走って美術室まで戻ってくる。
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『先生!……先生!先生!
一颯先生!』
そう何度も呼ぶと、
準備室の扉が開いて
「……っ、Aか、…どうした?」
と、まだ頭から血を流したままの先生が出てきた。
その足取りは不安定で、目は虚ろ。
先生の手から落ちて此方に転がってきたであろう包帯を拾う。
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私は急いで椅子を出して、
そこに先生を支えながら座らせた。
『……私手当てしますからっ』
先生は項垂れるように椅子に座って
眼鏡を外すと目を閉じた。
「お前……そのために戻ってきたのか……」
『……はい、心配だったので。』
先生の頭の傷を消毒し、
包帯を巻く。
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「……いっ、」
顔を歪ませ、小さく声をあげた先生。
『……あっ、ごめんなさい。痛かったですか?』
眼鏡をかけて、此方を見ながら
「ん……いや、ありがとな。」
という先生。
必然的に座ってる先生の目線が立ってる私より下で。
上目遣いみたいになってて
なんだか恥ずかしい。
でも……先生が無事で
本当に良かったと思った。
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すると、
先生の手がするっと伸びてきて、
私の頰に滑り込むように触れた。
親指で目の当たりを優しく摩る。
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「…また、泣いてる。」
汗みたいに涙がポロポロとひとりでにこぼれ落ちていた。
でも、今涙が流れる理由はわかる。
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『……一颯先生が無事で……良かったなって思ったら……』
涙で声が潤ってきた。
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先生は少しだけ口角を上げ、目を細めた。
「こんなところで死ねない。……死ぬわけにはいかないよ、Aを残して。」
そしてもう一度私の頰を優しく撫でた。
心の中に何かがポッと点火されたような
ほの温かさを感じた。
それがとてもとても心地よかった。
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本当は先生と一緒に死にたいんじゃない、
一緒に生きたいんだ……。
一緒に。
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都 - ページ32の、マインドボイス、通称“マイボ”と言うところで、マイボ、ではなくて“マイボイ”です。これからも頑張ってください。 (2019年5月5日 8時) (レス) id: cb1f0a8444 (このIDを非表示/違反報告)
和苗 - Day-2も楽しみにしてます! (2019年1月13日 23時) (レス) id: 7721ae642c (このIDを非表示/違反報告)
たー坊(プロフ) - 続き楽しみです(*´ー`*) 更新頑張って下さい*_ _) (2019年1月13日 18時) (レス) id: 765e39c43d (このIDを非表示/違反報告)
咲良(プロフ) - めっちゃすきです(;;)続き楽しみにしてます!! (2019年1月13日 2時) (レス) id: 50485c4a3d (このIDを非表示/違反報告)
和苗 - とっても面白いです!!!!更新頑張ってください! (2019年1月11日 23時) (レス) id: 7721ae642c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:なな | 作成日時:2019年1月7日 1時