ご対面 ページ6
Aside
来てしまった。村の人達が玄関の扉を叩いている。
「A〜村の人が来たわよー」
『今行きます』
犬神様の祭壇は寿村が創られた頃からあるコトブキ大社という場所で行われる。コトブキ大社に辿り着くまでは村の人達が大名行列のように並び歩いてゆく。
犬神様への挨拶やお願い事を忘れぬようコトブキ大社に着くまで、頭の中で何度も読み返した。聳え立つ鳥居の前で一礼し、中へ足を踏み入れて行く。村中の人という人々が集まる為歩く度足元から鳴る砂利の音が普段とは違い、何とも不気味に聴こえてしまう。
そして遂に犬神様の御屋敷の目の前へと来てしまった。此処からは生贄しか入れない。一度生贄に選ばれても居ない人が入ったそうだが、首に犬に噛まれた跡がついておりそのまま息絶えてしまったそうだ。
「Aじゃあね。」
「Aとはもう会えなくなっちゃうけど忘れないからね」
など家族や親友から次々に別れを告げられる。涙が溢れそうになるが此処で泣いてはいけない。何と言われても満面の笑みで頷かなければならない。それが掟だ。
『今まで私の支えとなってくれた村の方々に心より感謝を申し上げます。本日犬神様に捧げられます。でも恐くはありません。村を救う為だと思い行って参ります。』
恐く無い訳が無い。それでも行かなければならない。教えられた通りに御屋敷に顔を向け、一歩一歩ゆっくりと歩いて行く。襖の前で一礼し、御屋敷の中へと入る。正座をし、無礼にならぬよう頭を床につくまで下げ、先程覚えた挨拶をつらつらと言葉にしていく。
『今年の生贄に選ばれたAと申します。毎年この寿村は犬神様に救われているも同然のものでございます。今年も犬神様には御無礼承知で御願いしたく、此方の御屋敷へ参りました。』
此処までは何も問題が無かったのだ。そう、此処までは。
「今年の生贄はお前か。」
『...ッえ?』
此処には私しか居なかった筈だ。先程までは。村の人では無い事は確かだ。此処には私と犬神様しか入れないはず。
「あぁ、そうか。お前、俺の事知らへんもんな。
俺がお前らの崇めとる犬神様や。」
やばい。殺される。まだ死にたくない。頭が真っ白になってしまい、先程までスラスラと出てきていた言葉が途端に出てこなくなってくる。
『…ぁ、』
ずっと床に頭をつけている為姿は見れない。しかしコイツに殺されるというだけで恐怖しか感じる事が出来ない。
「…お前、なんか変やなぁ」
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あまね(プロフ) - すき (8月8日 4時) (レス) @page28 id: 2b125e9969 (このIDを非表示/違反報告)
ふぉっさ(プロフ) - 彩雲朱瑠璃さん» 返信、遅くなってしまい申し訳御座いません。感想だけで無く、アドバイスまで頂けるなんて感無量です。その、助言有難く頂戴致します。更新は不定期になってしまいますが、乞うご期待を。 (2022年7月25日 12時) (レス) id: c787972aae (このIDを非表示/違反報告)
彩雲朱瑠璃(プロフ) - すごく面白くて好きです!あ、あともしかしたら1ページ目のはないちもんめのところ、「ちょっとおいで」じゃなくて「ちょっと来ておくれ」かもです。在住地違いなどもあるかもしれませんが… (2022年7月18日 21時) (レス) @page1 id: b1698b1cbf (このIDを非表示/違反報告)
ふぉっさ(プロフ) - 名無しくんさん» 返信遅くなり、申し訳ございません。初コメ有難うございます。更新は不定期ですが、これからも頑張りますので、乞うご期待を宜しくお願い致します。 (2022年5月22日 10時) (レス) id: c787972aae (このIDを非表示/違反報告)
サラ(プロフ) - とても素敵な作品ですね!私には書けない…すごいです!なんかこう…すごいです!(語彙力0)これからも頑張ってください! (2022年4月14日 22時) (レス) @page9 id: 271b6082c9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:。 | 作者ホームページ:
作成日時:2022年4月1日 12時