彼が消えて早5年。今私は...6【降谷零・安室透】

229.side降谷 ページ31

あの夜が明けて。







俺はまた、警察病院へと足を運んでいた。









「もしもの時は...頼む。」









信頼している部下にそう電話をして車から出れば、そこには安室透...バーボンとしての同僚、ベルモットがいた。









「記憶が戻る前に始末しようってことかしら？」









感情を見せない笑みを浮かべながらそう問われ、俺もバーボンの皮を被る。焦りを見せてはいけない。









「言っている意味がわからないのですが？」









「あら、あなたがどうやってここへ入るつもりかしら。それとも何か伝手でもあるわけ？警察関係者としての何かが。」









「何を言っているのかがわからない。」








「立ち話もなんだから」









少しの会話の後、わずかに見える銃口が向けられた。一瞬にしてついて行くしかないと悟る。









「それが組織の命令ならば。」









仕方がないとでも言うように肩を竦めてベルモットを助手席に招き入れた。









「そういえば、バーボン、あなた子供がいるの？」







車を走らせていれば、急にベルモットからそんな質問が飛んできた。ヒヤッとしたのをどうにか押さえ込み、なんの事ですか？と首を傾げる。









「キュラソーを回収しに行った時、シルバーブレットと一緒にいたリトルボーイが貴方にそっくりだったのよ。」









「そうですか。残念ながら僕に子供はいませんよ。他人の空似じゃないですか？ほら、世の中には自分に似た人が3人いるって言いますし。」









「...そう、ならいいけど。」









訝しげながらも俺の話に頷いたベルモットに、心の中でそっと息をついた。









Aや透流、郁流、澪の事だけは絶対に組織にバレてはいけない。しかし3つ子は、揃いも揃って俺と似た容姿を持っている。特に透流に至っては、俺のミニチュア版と言っても過言ではないのだ。









どうかこれ以上、ベルモット以外の組織の奴らに見られたり、目を付けられたりしませんように。









そんな事を考えながら、ベルモットに言われるがままに車を走らせた。

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