彼が消えて早5年。今私は...6【降谷零・安室透】

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「声が、でない...」








先生から放たれたその言葉を反芻するも、上手く言葉が飲み込めない。








先生から澪に視線を移せば、澪は涙を零しながらはくはく、と口を動かしている。









"ごめんなさい"









口の動きがその言葉を紡いでいることに気付き、ハッとして澪をぎゅっと抱きしめた。









「大丈夫...大丈夫だよ。澪のせいじゃない。謝らなくていいんだよ？...目覚めてくれただけで、すごく嬉しい。...ありがとう」









抱きしめた腕にさらに力を入れれば、澪は控えめにきゅっと私の服を握った。






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泣いていた澪からふっと力が抜けた。









疲れて寝てしまったらしい。









すぅすぅと寝息をたてている澪の目元には、未だに涙が光っていた。今にも零れそうな涙をそっと拭って頭を撫でれば、心なしか澪の表情が和らいだ気がして、私もそっと息を着いた。









「お待たせしてしまってすみません。それで、今後は一体どうすれば...？」









澪が泣き止むのを待ってくれていた先生にそう声をかければ、うん。と頷いて詳しい病状を説明してくれた。









体調面は問題なさそうだから、いくつか検査をして問題なければ明日にでも退院できること。






声に関しては心的外傷から来る失声症だということ。







もし退院したなら、フラッシュバックに気を付けてもし声が戻ったらもう一度病院に来ること。しばらく経っても声が戻ってこなかった場合も診察を受けて治療を考えること。









このような事を言って先生は次の患者さんの元へと向かっていってしまった。





...覚えなきゃ。









そう思って、脳内で箇条書きにまとめた先生の話を、反芻して頭に入れていく。









すると後ろに立っていた看護師さんから声をかけられ、澪の検査に向かうことになった。









早く、家族みんなで笑っていた日々に戻れますように。









そんなことを思いながら、寝ている澪を抱えて検査室への道を歩いた。

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