・ ページ27
ハル
心臓がドキドキする。
1人でステージに立つことに緊張しているわけじゃない。
それなのにどうしてこんなに心臓の音がうるさいんだろう。
ステージに上がる直前、スタッフの顔色を伺うと皆笑顔で送り出してくれた。
それを見てほんの少しだけほっとする。
衣装スタッフのユアヌナが気合いを入れて作ったという衣装は可愛らしく、それでいて私の踊りを邪魔しないように素材や服の形を気を使ってくれた。
･･･ただ裾のスリットは深すぎやしないか？と思うけど。
ステージに立った瞬間、カラットの声が聞こえてくる。
その声は歓声以外にも驚きの声が混じっていた。
ゆっくりとステージ中央へと歩き出すと、音楽が鳴りだす。
手を伸ばし、足を伸ばし、ステージの端から端を縦横無尽に駆け回る。
普段は大人数で踊るからか、こんな風に好き勝手に踊り回るなんて変な感じだ。
大まかな振りは決めてあるけれど、この場の空気と見ているカラット達の視線、それから私の気分で所々振り付けを変える。
決して長くはない時間、けれど私にはとてつもなく長く感じた。
曲が終わるとカラット達が大きな歓声をあげてくれた。
私の名前を呼ぶ声が聴こえる。
客席をぐるりと見渡すとペンライトがキラキラと輝いていて、それはすごくすごく綺麗だった。
ステージから降りて裏に回るとスニョンイオッパが「お疲れ様」と声をかけてくれる。
「オッパ、私ちゃんと踊れてた？」
HS「うん、凄く綺麗だった」
「そう？へへっ、ありがとう」
HS「･･･ごめんな、今まで踊らせてやれなくて」
「え？」
HS「ハルは･･･後悔してない？」
「後悔？何に？」
HS「もし･･･もし！SEVENTEENじゃなくてヨジャグループでデビューしてたらお前はきっと･･･」
褒めたと思ったら何だか悲しそうな顔をするオッパ。
きっと何？
「私のダンスって変？SEVENTEENには合わない？」
HS「違う、そうじゃない！そうじゃなくて･･･」
何が言いたいかよくわからなくて首を傾げていると、スタッフから次の曲の準備に入るように言われた。
オッパもすぐに移動したから結局会話は中途半端に。
「まっ、後で聞けばいっか」
衣装を着替えてまたステージへと上がる。
さっきよりも大きな歓声が私の耳に届いた。
それが何だか私には凄く嬉しかった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 321人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：月未
| 作成日時：2020年6月21日 8時
