真っ赤な短編集~

＊ ページ10

Side Yt






今日やまは薮ちゃんと急遽ごはんに行っちゃったから仕事終わりに1人で家に帰り、


キチンとしたごはんを作るのもめんどくさくて3分で作ったカップラーメンをすすった。






改めてやまの作ってくれるごはんがどんなに美味しいかを思い出し少し寂しくなる。





「ごちそうさまでした。」





早めにシャワーを浴びて、


ソファーに座ってテレビを見る。





すると丁度この夏シーズンのさくらんぼ特集をやっていて喉がなる。





これ買ってきたらやまも喜ぶかな？


『美味し〜ぃ！！


裕翔くんありがとう！大好き！！』



やまが喜ぶ姿を妄想しながら立ち上がり財布と携帯をポッケにしまった。



****



「♪〜♪〜」



プレシャスガールを鼻歌で歌いながら左手にはスーパー袋を持ちながら来た道を辿って帰ってる。



まだ9時だし、

やま帰ってないよね〜…





公園を通り過ぎてあとちょっとで家に着くってとこで聞き覚えのある声が聞こえた気がして振り向くと、


ブランコ揺られる薮ちゃんの姿があった。



声をかけようと思っても電話してるし悪いかな〜って思ってそのまま帰ろうとすると




「裕翔が…」



急に出た自分の名前にドキリと心臓が跳ねてとっさに近くの看板の後ろに隠れた。



隠れることないじゃんかと自分に言い聞かせたのもつかの間、



「裕翔が山田の事を殴ってるみたいなんだ。」




そうハッキリと聞こえた言葉に驚きで身動きできなくなってしまった。


「裕翔、二重人格なんだと。」



追い討ちをかけるように困り果てた声も重ねられる。



これ以上聞きたくなくて、

帰ろうと動いた時にガサッとなった袋は大きなため息によって掻き消され、


そのまま振り返らずに全速力で走った。



****



ただいまも言わずに入った玄関からは、

未だにやまが帰って来た気配はなくてドアを閉めるなりそのまましゃがみこんでしまった。





俺が…二重人格…？



やまを傷つけてた…？




そう考えると今朝起きたときにやまがリビングの床で痣だらけで寝転がっていたことも "ぶつけた" とか "寝相が悪いだけ" よりはよっぽど説明がつく。


それだけではなく、

ここ数ヶ月のうちに不自然に怪我が増えるやまの全てに説明がつく。





「嘘だろ…」



そんなことあるはずない。


やまとちゃんと話そう。




そう決めて立ち上がった瞬間、

ドアの鍵を開ける音が聞こえて振り返る。





そして俺の記憶はそこで途絶えた。

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