109:晴耕雨読 ページ9
一方、伏黒甚爾は模索していた。
雨の向こうにはナメクジそっくりの呪霊がいる。
アメフラシ、だったか。
甚爾は三節棍___特級呪具游雲を回し肩にかける。
この雨の答えが分かっていない。
呪力を伴わないのであれば、恐らく游雲も自分も雨を抜けられるだろう。
そう、無意味だ。このアメフラシにとっては天敵のはず。
しかし、何故だこの余裕は。
攻撃をまともに仕掛けてくる気配がない。
「突っ込んで確かめる…しかねぇか」
甚爾は呟くと同時、雨の中に突っ込んだ。
しっかりと濡れる感触があって、溶ける感触はない。
やはり俺の読みは間違いじゃなかったか_______
矢先、アメフラシは高らかに鳴いた。
同時だった。
「……!!?」
左脹脛に激痛。
甚爾は一気に体制を崩したものの、その程度で戦闘不能になる男ではない。
反射的に体制を立て直しつつ、アメフラシから距離を取る。
今、俺は何に“貫かれた”!?
脹脛には、指一本なら入りそうな穴がぽかりと開き、加えて貫通していた。
床にはその穴からぼたりと血が落ちる。
雨は貫かれる瞬間、突然止んだ。
そして、止んだ途端に激痛が走った。
「…止んだ?……いいや、雨にしちゃ違和感があった」
幸いな事にアメフラシは早々に攻撃には攻め込んでこなかった。
逆に言えば、アメフラシは一定の距離を保ち続けている。
案外慎重なのだろうか。しかし、その分甚爾には考えれる時間がたっぷり与えられた。
「もっとこう、なにか違和感があったんだよ。雨にしちゃ気持ち悪ぃというか…」
自分が何を言っているのかは分からなかったが、感じた事をそのまま言語化する。
もっと陰湿でじんわりとした何かを甚爾は雨が止む一瞬で感じたのだ。
「それと、変に均一だった……」
ぽた、ぽた、ザァッ。やがてまた雨が降り出す。
これで甚爾とアメフラシの間に再び雨の壁が生まれた。
「____これだッ」
甚爾はハッとして顔を上げた。
妙な違和感はこれだ。
先程雨が止む時、雨はじわじわと上がるわけではなく徐々均一にあがっていった。
アメフラシから、甚爾の方へ雨が徐々に均一に減っていく。
雨の層があるとしたら、それが一枚一枚甚爾の方へ捲られていく感じだ。
「いや……上がるとか捲るじゃねぇ、雨は“集約”されていったんだ…ッ」
頭の中でピースがカチリと当てはまる感じがした。
雨は、一瞬にして甚爾の左脹脛の方へ集約され“水柱”を作り上げた。
それが甚爾の左脹脛を貫いたのだ。
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鼻毛太郎(プロフ) - がろさん» コメントありがとうございます!!当時かなり気合い入れて書いていたので、褒めて頂けてとても嬉しいです😭🤍 毎回満身創痍バトルしてますが、ぜひぜひ手に汗握ってお楽しみ頂ければ幸いです!! (2月10日 16時) (レス) id: 642d1e8526 (このIDを非表示/違反報告)
がろ - 戦闘シーンが凄く引き込まれます!手に汗握っちゃいましたw とっても面白かったです😊 (2月9日 22時) (レス) @page37 id: 22f975986f (このIDを非表示/違反報告)
鼻毛太郎(プロフ) - ぴくさん» ありがとうございます、とても嬉しいです!!💜次章でもコメントを頂いていて、励みになります…!😭残り少ない1年生編ですが、最後までお付き合い頂ければ幸いです (2022年4月23日 0時) (レス) id: 642d1e8526 (このIDを非表示/違反報告)
ぴく(プロフ) - 設定とかキャラとかしっかり作り込まれてて、気づいたら一気読みしてます。応援しています! (2022年4月23日 0時) (レス) @page39 id: 8f6e3156ea (このIDを非表示/違反報告)
鼻毛太郎(プロフ) - Chaosさん» 本編の方でもコメント頂き、こちらでも…!!嬉しい限りです💜🥺2頁でやれることを5頁ぐらいでやってますが、そろそろこちらも一区切り着きそうです。ぜひ、最後までお楽しみ下さい!! (2022年1月28日 10時) (レス) id: 642d1e8526 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:鼻毛太郎 | 作成日時:2021年12月25日 12時