150:修羅羅刹 ページ50
Aなら________。
「…」
暫くの沈黙があった。
底なしの馬鹿なら。アイツなら。
「……やる、しかねぇか」
一つだけ浮かび上がった策は、普段の甚爾であれば選ばない選択であった。
何故なら、あまりにも馬鹿すぎるからだ。
規格外すぎるし、何よりも己をそこまで信じれない。
だが、Aなら迷わず「だったらこうすりゃいいじゃん」と選ぶだろう。
自分なら出来る。他の誰かに出来なくても、自分なら。
アイツならそう考える。
自分を誰よりも信じてやれるから。
自分を自分が最も信じているから。
それが、アイツが持つ強さ。
どんなに強い相手だとしても、これには勝てない。
甚爾は、思わずフッと笑った。
「何が可笑しい…?」
甚爾に気付き、サルマネが訝しげに片眉をあげる。
すると、甚爾は気怠げに首筋を撫でながら「いやぁ、なに」と口を開く。
「俺も、アイツのようにたまには自分を信じてみようかと思ってな」
「は?」
「遠い昔に自尊心は捨てたんだが、どうしてかな。あの馬鹿を思うと、その捨てたもんを拾い上げてみたくなる」
「なんの話をしている」
サルマネは訳が分からないという顔を浮かべていた。
分からなくて良い。いや、一生かけてもお前には分からないさ。
あぁ、本当に。
甚爾は喉奥で笑って、額に手を当てた。
「死を前にイカれたか」
「まさか」
顔を拭うと、甚爾はサルマネへと返した。
その顔は、先程の追い詰められた顔とは全く違った。
Aと同じ。
諦めを、絶望を知らない顔。
コイツ…、サルマネはその顔を前にして狼狽えた。
脳の中で警鐘が鳴り出す。長年の本能が何かを伝えようとしている。
だが、なんだ。何をだ…!!!
ゆらり、甚爾が緩慢に動き出した。
「賭けてみるか、天与の呪縛に」
その時、甚爾は黒龍の如く駆けた。
警鐘が最後の一音を甲高く鳴らし、サルマネはほぼ本能的に叫ぶ。
「雷来鳥ッッッ!!!!」
怒号と悲鳴が入り混じった叫びに、雷来鳥は高く啼き、上空から鷹の如く甚爾目掛け滑空した。
凄まじい速度は直ぐに甚爾との距離を縮め、止め処ない雷を振り落とす。
しかし、甚爾の速度は落ちない。
雷を間一髪で避け、そして、再びサルマネとの距離を詰めた。
甚爾が刀を振り被る。
一瞬の静止が生まれる。
待っていたと言わんばかりに、雷来鳥が啼く。
「学習能力の無い猿が…ッ!」
勝った。サルマネが確信したその時、肩から地へと一直線に削ぎ落とされたのだ。
727人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「呪術廻戦」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
鼻毛太郎(プロフ) - がろさん» コメントありがとうございます!!当時かなり気合い入れて書いていたので、褒めて頂けてとても嬉しいです😭🤍 毎回満身創痍バトルしてますが、ぜひぜひ手に汗握ってお楽しみ頂ければ幸いです!! (2月10日 16時) (レス) id: 642d1e8526 (このIDを非表示/違反報告)
がろ - 戦闘シーンが凄く引き込まれます!手に汗握っちゃいましたw とっても面白かったです😊 (2月9日 22時) (レス) @page37 id: 22f975986f (このIDを非表示/違反報告)
鼻毛太郎(プロフ) - ぴくさん» ありがとうございます、とても嬉しいです!!💜次章でもコメントを頂いていて、励みになります…!😭残り少ない1年生編ですが、最後までお付き合い頂ければ幸いです (2022年4月23日 0時) (レス) id: 642d1e8526 (このIDを非表示/違反報告)
ぴく(プロフ) - 設定とかキャラとかしっかり作り込まれてて、気づいたら一気読みしてます。応援しています! (2022年4月23日 0時) (レス) @page39 id: 8f6e3156ea (このIDを非表示/違反報告)
鼻毛太郎(プロフ) - Chaosさん» 本編の方でもコメント頂き、こちらでも…!!嬉しい限りです💜🥺2頁でやれることを5頁ぐらいでやってますが、そろそろこちらも一区切り着きそうです。ぜひ、最後までお楽しみ下さい!! (2022年1月28日 10時) (レス) id: 642d1e8526 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:鼻毛太郎 | 作成日時:2021年12月25日 12時