【呪術廻戦】呪術とギャル-0.2-

148：疾風迅雷 ページ48

「夜蛾…、」

唖然、困惑。
Aを眺め黙っていた夜蛾を呼ぶ。
彼は、呼ばれてハッとし意識を戻す。

短い息を忙しく漏らし、Aは口元を拭う。
黒い制服の袖は赤黒く、ぬらぬらと光を帯びていた。

やはり、Aの目からは光が消えていない。
絶望の名を知らない。

巻き込まれた望まぬ運命に、何故彼女はここまで体を張れるのか。
どうして意志が折れないのか。

「夜蛾」

Aが、また名を呼びながら上着を脱ぐ。
血に塗れたシャツが露わになる。

そして、彼女は上着を捨て去ると最後に長い息を吐いた。


「“時間”をくれ」


何度も行われる深呼吸。
鋭く揺るがない瞳。
一点を見つめ続ける。

瞬間、夜蛾はAの思いを全て察した。


「死でも受け入れたか？A」

遠くで悠々と訊ねる男の姿は、いつの間にか綺麗そのものに変わっていた。
反転術式持ち。呪術界ではそれ即ち何を意味するか。


男をじっと見て。
そして、夜蛾は固く目を瞑り開いた。


無言で男へと歩を進めながら、夜蛾は上着を脱ぐ。
こうなれば、呪骸を持ってきたところで同じだったな。
思いながら、上着を地に捨て置くと同時、歩が止まった。

対面する男の姿。


自身が受け持つはずだった生徒の姿。
Aには秘密にしておくはずだった。余計な心配は子供のするもんじゃない。
しかし、それももう潮時なのかもしれない。
どういう星の巡り合わせかAは出会ってしまったから。

Aは、まだ“名取吉祥”が何者なのかを知らない。

しかし、それでも“親友”だと言ったのだ。
時間じゃない。心でAは分かったのだ。

この体には、“名取吉祥”ではない何者かが居る。

Aは、助けるのだと言った。
それが、どんな最期を迎えようとも。



Aに、最期を選ばせてやりたい。
どんな事があっても、この正体不明の男が彼らの最期を決めていいはずがない。


「生徒の為に、担任が命を張らなくてどうする」


男は、夜蛾の姿に喉奥で笑う。


「カッコつけるじゃないか」


夜蛾の拳に呪力が灯る。















2階では、室内にも関わらず雷鳴が轟いていた。
速度を落とすこと無く男＿＿＿＿甚爾は刀『雲隠』片手に地を駆ける。
彼の先に居るのは、琵琶を持つ呪霊サルマネ。
そして、彼の後を追うのは緑色の電光。

上空で雷来鳥が啼く度に、甚爾目掛け幾つもの雷柱が撃ち落とされる。

「…ッ」

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