145:罵詈雑言 ページ45
引こうとするも、腕がうんとも寸とも言わない。
クソ、夜蛾があからさまに顔を顰める。水壁の奥で、水の揺らぎの中に男が不気味に口角を吊り上げたのが見えた。
「まずは、お前だ」
刹那、水壁が破裂し自由を取り戻したと思った途端、散った水滴が夜蛾目掛け飛んだ。
この無数の水滴…先がまるで針のように尖っている…ッ!?
夜蛾は咄嗟に水滴の先を視界に捉え理解したが、この至近距離では避けるのも間に合わない。
体に呪力を集中し、最低限の致命傷をカバーする。
この俺に、ものの一秒もない中での呪力操作は可能か?
いや、考えている暇はない。
やれるだけ、やる_______、
「違う…ッ」
自身に当たる直前、夜蛾は言葉を溢した。
この男が未だに笑みを浮かび続けている理由はなんだ。
それはまさしく、この水針が自分を目指しているからではないからではないか。
「この水針は、俺じゃない…ッ!俺の後ろ、少し先の、彼女か…ッ!!」
夜蛾の背後、そこには未だ横たわるAの友人の姿があった。
「水は水でも、私の呪力から生み出されたものだ。自由自在という訳だよ」
男が、くんと指を曲げた同時に、水針は夜蛾に当たるギリギリの距離で方向を変えた。
全ての針が一斉に向きを変え、つつじの方へ向かっていく。
恐ろしい男だ。ギリギリまで夜蛾に向かってくると見せれば、自身の身の防衛に意志を変換する。
それを利用し、つつじの元へ向かう時間を稼いだ。
気づいたものの、夜蛾がつつじの もとまで向かい彼女を護る事は不可能。
何故、つつじを囮にとってまで無傷であったのかが今漸く分かった。
男は、少なからずこの現状を予想していた。
だから、予めカードとして足手纏いを取っておいたのだ。
そして今、そのカードを使った。
抵抗の出来ないつつじへと迫る無数の水針。
非呪術でもなければ、意識もないつつじでは助かる術はない。
唇の裏で舌打ちをしたその時、再び水針が方向を変えたのだ。
「…!」
巫山戯た笑みを浮かべ続けていた男の顔が咄嗟に曇る。
水針は一斉に方向を変えると、凄まじいスピードでつつじから離れた別方向へ一直線に飛んでいくではないか。
まるで、“何かに引き寄せられている”かのように。
そして、すぐさま爆撃にも似た音を出し土煙が上がる。
夜蛾は一連の有様を前に、安堵するどころか、それを通り越して唖然とした。
「だぁぁああ!!!いッッッてぇぇええ!!!」
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鼻毛太郎(プロフ) - がろさん» コメントありがとうございます!!当時かなり気合い入れて書いていたので、褒めて頂けてとても嬉しいです😭🤍 毎回満身創痍バトルしてますが、ぜひぜひ手に汗握ってお楽しみ頂ければ幸いです!! (2月10日 16時) (レス) id: 642d1e8526 (このIDを非表示/違反報告)
がろ - 戦闘シーンが凄く引き込まれます!手に汗握っちゃいましたw とっても面白かったです😊 (2月9日 22時) (レス) @page37 id: 22f975986f (このIDを非表示/違反報告)
鼻毛太郎(プロフ) - ぴくさん» ありがとうございます、とても嬉しいです!!💜次章でもコメントを頂いていて、励みになります…!😭残り少ない1年生編ですが、最後までお付き合い頂ければ幸いです (2022年4月23日 0時) (レス) id: 642d1e8526 (このIDを非表示/違反報告)
ぴく(プロフ) - 設定とかキャラとかしっかり作り込まれてて、気づいたら一気読みしてます。応援しています! (2022年4月23日 0時) (レス) @page39 id: 8f6e3156ea (このIDを非表示/違反報告)
鼻毛太郎(プロフ) - Chaosさん» 本編の方でもコメント頂き、こちらでも…!!嬉しい限りです💜🥺2頁でやれることを5頁ぐらいでやってますが、そろそろこちらも一区切り着きそうです。ぜひ、最後までお楽しみ下さい!! (2022年1月28日 10時) (レス) id: 642d1e8526 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:鼻毛太郎 | 作成日時:2021年12月25日 12時