105:一体分身 ページ5
「
うふ、ヤオビクニと名乗った彼女は床から半身だけ出したまま、気前良さそうにこちらに笑いかけてきた。
その笑顔だけでもう十分不気味だ。
笑っているのに、頭の上から爪先まで品定めされている気分になる。
「アイツ……床を、まるでプールみたいに…」
本当にその通りだ。
このエントランスの床が全て水面だとしたら、彼女が半身だけ出ていても何も不思議じゃない。
けれど、A達は現在その床で二本足でしっかりと立っている。
床は床。
やはり、ヤオビクニだけが可笑しいのだ。
術式か、そう考えていると甚爾が「A、見ろ」とヤオビクニよりも少し後ろへ向けて顎をしゃくった。
「お前の言う“プールみたいに”は、あながち間違いでも無さそうだ」
ヤオビクニの背後、それもまた床から出ていたのだが魚のような尾が揺れていたのだ。
青色のゆらゆらと揺れる尾は、どう見てもヤオビクニのものだった。
さながら、人魚がごとく。
へぇ、中々…
甚爾は、ここに来て初めて緊張から来る笑みを見せた。
ヤオビクニから渦巻く呪力は、彼女の美しく人当たり良さそうな笑顔とは裏腹に禍々しいものだと甚爾でも分かる。
ヤオビクニは、警戒をする彼らを前に未だ表情を崩さずにいた。
そして、すっと人差し指を天井に掲げる。
「それと、彼は『アメフラシ』」
同時、二人の体に影が指した。
弾かれるよう見上げた彼らは、思わずその天井から降ってくる正体に目を丸くする。
「居ないんじゃない、ずっと上に居たのか…ッ!?」
巨大ナメクジを上空に、Aが叫ぶのを合図に二人は背を離し転がるよう避けた。
甚爾は靴の底をすり減らせ、エントランス床に踏ん張った。
やられた、Aと自分の間にこの馬鹿デカいナメクジに入られた…!
自分とした事が珍しく呪霊を把握出来なかった。
恐らくそれは、特級呪霊を前に意識が持っていかれていたからだ。
思った以上に仕組まれている。
Aは、アメフラシの後ろ。
特級呪霊の女_ヤオビクニの相手に必然的になってしまうだろう。
Aが特級と戦う。
甚爾は、目の前のアメフラシを前にニタリと笑った。
その顔は緊張か否か。
ずるりと体に巻き付く芋虫呪霊から別の呪具を引き出す。
真っ赤な三節棍。
「こりゃあ、ゆっくり相手もしてらんねぇな」
727人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「呪術廻戦」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
鼻毛太郎(プロフ) - がろさん» コメントありがとうございます!!当時かなり気合い入れて書いていたので、褒めて頂けてとても嬉しいです😭🤍 毎回満身創痍バトルしてますが、ぜひぜひ手に汗握ってお楽しみ頂ければ幸いです!! (2月10日 16時) (レス) id: 642d1e8526 (このIDを非表示/違反報告)
がろ - 戦闘シーンが凄く引き込まれます!手に汗握っちゃいましたw とっても面白かったです😊 (2月9日 22時) (レス) @page37 id: 22f975986f (このIDを非表示/違反報告)
鼻毛太郎(プロフ) - ぴくさん» ありがとうございます、とても嬉しいです!!💜次章でもコメントを頂いていて、励みになります…!😭残り少ない1年生編ですが、最後までお付き合い頂ければ幸いです (2022年4月23日 0時) (レス) id: 642d1e8526 (このIDを非表示/違反報告)
ぴく(プロフ) - 設定とかキャラとかしっかり作り込まれてて、気づいたら一気読みしてます。応援しています! (2022年4月23日 0時) (レス) @page39 id: 8f6e3156ea (このIDを非表示/違反報告)
鼻毛太郎(プロフ) - Chaosさん» 本編の方でもコメント頂き、こちらでも…!!嬉しい限りです💜🥺2頁でやれることを5頁ぐらいでやってますが、そろそろこちらも一区切り着きそうです。ぜひ、最後までお楽しみ下さい!! (2022年1月28日 10時) (レス) id: 642d1e8526 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:鼻毛太郎 | 作成日時:2021年12月25日 12時