【呪術廻戦】呪術とギャル-0.2-

138：紫雲雷電 ページ38

とんでもねぇ、呪力量だな。

余す事なく祓い終え、最後に刀で空を斬る。
鋒に付着していた呪霊の血液が床に弧を描かせ飛んだ。

甚爾は、そんな刀をまじまじと見遣る。
以前一度だけ、Aの母親である綺羅が使用しているのを見た事があるが、その際の刀はここまでの呪力を持ち合わせていなかった。

恐らく、この刀の能力は『刀として顕現させた術師の呪力を100％無条件に引き出す』というものではないだろうか。
Aの呪力は、この刀が持つ呪力には程遠い。
しかし、本来はこの呪力量を持ち合わせているのだろう。
単純に、Aが己の呪力量に気づいていないだけである。

寧ろ、自身が持ち合わせる全ての呪力量を把握して、コントロール出来ている呪術師は殆ど存在しない。


そんな事を可能にしようと思ったら、全員が五条の坊主のように六眼を持たなきゃ無理だ


だが、この刀させあれば別である。
己の脳をフル回転させる必要もなく、刀が勝手に引き出してくれるのだから。


「身の毛もよだつってのは、まさにこの刀の事だな…」


ある程度の力を持ち合わせる呪術師がこれに呪力を流せば＿＿＿＿。
ものの一瞬で、呪術界の戦力図が傾く事となるだろう。


「通りで、ババァが教えてくれねーわけだ」


綺羅は、甚爾が何者であるかを知っていた。
呪力が無くとも、今のように呪力あるものが刀として組み立て甚爾に手渡せば、分かりやすく脅威がそこに生まれる。


いとも簡単に呪霊を薙ぎ払ってしまった甚爾を前に、サルマネは歯噛みした。
目は血走り、フーフーと唸り、怒りを全く抑えられていない。

「小癪な、小癪な、小癪なァッ！！！」

無我夢中に掻き鳴らす琵琶。
音に乗り飛ぶ斬撃を、甚爾は弾く。

弾かれた斬撃は、階段に半月型の切り傷をつけ、また別の斬撃は壁を壊し、天井からは瓦礫片が落ち。

甚爾は、斬撃を弾きつつも前へと出た。
サルマネの喉を潰すか、はたまた琵琶を叩き切るか。


「どっちでもいいか…ッ」


凶悪に笑うと同時、サルマネと距離をぐっと詰めた。
まさに目と鼻の先。

刀を振り被ったその時、甚爾目掛け稲妻が走った。
急いで持ち前の体幹を活かし飛び退く。

甚爾は汗を拭った。
恐らく、天与呪縛でなければ死んでいた。


「『意馬心猿(いばしんえん)・載』」


サルマネの頭上で甲高い声をあげ旋回する鳥。
広げた羽の後に続き、鳥の周りでは時折雷鳴が走る。


「私が使役する中で最速の呪霊だ。名を雷来鳥(らいこうちょう)」

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