133：強迫観念 ページ33
「…仲間割れかァ？」
間合いに神経を注ぎ込み、甚爾は尋ねる。
いつおっ始めようが構わない。いつでも来い。
「元より、呪霊と人間なんぞが仲間な訳がなかろう。反吐が出る…ッ！あの小童が馬鹿正直にゴミ掃除をした後は、時期を見て寝首を斯くつもりで居たさ。その辺りが、奴は所詮馬鹿な餓鬼であった点だな」
虎視眈々と、長の首を狙う部下。
さて、誰がどう騙されている。
「まずは貴様からだ、猿」
「ははッ、言うね。どっちが猿マネ上手か競おうぜ。“サルマネ”」
べべん、琵琶の弦が掻き鳴る＿＿＿＿＿。
Aは駆け上がった。
息をすることも忘れる程、必死に。
何段も階段を飛ばし、上へ上へと目指して駆け上がる。
這うように死に物狂いで上がった。少しでも早く辿り着けるように。
傷だらけの体が軋んでいる。
でも、Aの体はそれでも我先にと動いた。
健康な時よりも必死に。
薄暗い螺旋階段のその先に、最後の扉の向こう側にアイツがいる。
探し続けたアイツがいる。
吉祥
吉祥
吉祥…ッ！！！
階段を上がるたびに、彼との記憶が映写機のようにカラカラと回り蘇る。
その映像は、きっと古びた映画館で流れるんだ。
私と吉祥しか知らない映画館で流れる。
猫を助けたことから始まり、電子の海を介して私たちは何度も言葉を交わす。
＿＿＿＿＿可借夜さんは、
かたっ苦しいなぁ。
＿＿＿＿＿じゃあなんて？
Aって普通に呼んでよ
＿＿＿＿＿Aさん…っていうのは？
えぇー、じゃあいつか呼び捨てで呼んでよね
分かった。そう返してきた文字を打つ君。
どんな顔かな。電子の海のその先を、何度も想像する。
生き物の死を看取り、君は波を流した。
自分が泣いていることに彼は酷く驚く。
公園に行き、沢山の言葉を交わす。電子の海を越える。
海を越えた先の夜は、それはもう本当に綺麗だった。
彼に、私は何者なのかを話した。
彼は一ミリも馬鹿にしなかった。
心からの親友に出会ったと思った。
まるで、砂漠の上で一粒の宝石を見つけたように嬉しかった。
たった一粒の宝石を一生大事にしよう。
彼は言った。
「君にずっと会いたかった」と。
可借夜は、明けるのが惜しいほど美しい夜のことだと。
彼にとって、自分は明けるのが惜しいほど美しい夜だったのだろうか。
あの日の夜は、どうしてあんなにも美しかったのだろうか。
吉祥、あの時のお前は“誰”なんだ
吉祥、いつものお前は“誰”なんだ
お前は“誰”だ。
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鼻毛太郎(プロフ) - がろさん» コメントありがとうございます！！当時かなり気合い入れて書いていたので、褒めて頂けてとても嬉しいです😭🤍 毎回満身創痍バトルしてますが、ぜひぜひ手に汗握ってお楽しみ頂ければ幸いです！！ (2月10日 16時) (
レス) id: 642d1e8526 (このIDを非表示/違反報告)
がろ - 戦闘シーンが凄く引き込まれます！手に汗握っちゃいましたw とっても面白かったです😊 (2月9日 22時) (レス) @page37 id: 22f975986f (このIDを非表示/違反報告)
鼻毛太郎(プロフ) - ぴくさん» ありがとうございます、とても嬉しいです！！💜次章でもコメントを頂いていて、励みになります…！😭残り少ない1年生編ですが、最後までお付き合い頂ければ幸いです (2022年4月23日 0時) (レス) id: 642d1e8526 (このIDを非表示/違反報告)
ぴく(プロフ) - 設定とかキャラとかしっかり作り込まれてて、気づいたら一気読みしてます。応援しています！ (2022年4月23日 0時) (レス) @page39 id: 8f6e3156ea (このIDを非表示/違反報告)
鼻毛太郎(プロフ) - Chaosさん» 本編の方でもコメント頂き、こちらでも…！！嬉しい限りです💜🥺2頁でやれることを5頁ぐらいでやってますが、そろそろこちらも一区切り着きそうです。ぜひ、最後までお楽しみ下さい！！ (2022年1月28日 10時) (レス) id: 642d1e8526 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：鼻毛太郎
| 作成日時：2021年12月25日 12時
