125：行雲流水 ページ25
禪院甚爾は、呪術界御三家が一角『禪院家』にて生まれた。
呪力がミリも存在しなかった彼にとって、禪院家というのは地獄が如く苦しい世界だった。
相伝で呪術師、呪力のみなら漸く人間、女ならば一生雑用気に入られれば人間。
そのどれもに該当しなければ、存在自体も容認されずに生きる事になる。
甚爾は、その“どれもに該当しない枠”だった。
人間の扱いなんぞ、一度も受けたことはない。
どうして産んだんだよ、なんて言葉は許されない。
お前が産まれてきたのが悪いんだよ。恨むなら自分を恨め。
まるで言い聞かせられるように言われた言葉。
孤独に悲しさを覚えた事は無かったが、甚爾は日に日に自尊心をすり減らし、いつからかその言葉さえも忘れていった。
濁った瞳で、このドブ色の世界を眺め続ける。
人間でない故に天から唯一与えられたのは、人智を超えた殺戮能力だけだった。
あぁ、そうかい。
人間辞めろって話ね
甚爾は家を出た。
口元の傷が何処か傷んだが、ここを出ればもう痛みを気にする必要も無いだろう。
俺に傷を与えられる奴は、もういない。
自尊心なんて捨てろ、ただひたすらに殺し回れ。
自分を保つには、もうそれしかねぇからな
これで、ドブ色の世界を引っ掻き回すしかねぇからな
復讐なんて大それたことは考えちゃいねぇよ。
ただ、一瞬でも俺の目に別の色が灯りゃいい
それだけだよ
その瞳に、金の色が灯った。
コイツだけが、この世界で俺を視界に捉えた。
誰もが俺に気づかない恵まれた世界で、たった一人。
気紛れで「強くしてくれ」というから付き合った稽古だった。
何時しか俺はコイツにとって“居なければ死んでしまう存在”になっていた。
コイツが見る世界には、俺が必要らしい。
コイツはどうやら、俺が居たからこのドブみたいな世界をちょっとはマシに見れるようになったらしい。
本当に、なんと言っていいか。
大バカ野郎というのはコイツの事を言うのかもしれない。
人ですらない俺を、尊敬してると。
悲しい事に、この大バカ野郎はバカなので思ったことを思ったままにしか話せないし、話さない。
世辞ならどんなに良かったか。
どんなに楽だったか。
お前がこの世界に居たら、俺はまともに世界を恨めないだろ。
俺がどんな奴なのかをこいつは知らない。
でも、コイツにとって呪術師も天与呪縛も呪詛師も等しく“人間”なのだ。
「オッサン…？」
喋らない甚爾を不審に思ったAが呼ぶ。
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鼻毛太郎(プロフ) - がろさん» コメントありがとうございます！！当時かなり気合い入れて書いていたので、褒めて頂けてとても嬉しいです😭🤍 毎回満身創痍バトルしてますが、ぜひぜひ手に汗握ってお楽しみ頂ければ幸いです！！ (2月10日 16時) (
レス) id: 642d1e8526 (このIDを非表示/違反報告)
がろ - 戦闘シーンが凄く引き込まれます！手に汗握っちゃいましたw とっても面白かったです😊 (2月9日 22時) (レス) @page37 id: 22f975986f (このIDを非表示/違反報告)
鼻毛太郎(プロフ) - ぴくさん» ありがとうございます、とても嬉しいです！！💜次章でもコメントを頂いていて、励みになります…！😭残り少ない1年生編ですが、最後までお付き合い頂ければ幸いです (2022年4月23日 0時) (レス) id: 642d1e8526 (このIDを非表示/違反報告)
ぴく(プロフ) - 設定とかキャラとかしっかり作り込まれてて、気づいたら一気読みしてます。応援しています！ (2022年4月23日 0時) (レス) @page39 id: 8f6e3156ea (このIDを非表示/違反報告)
鼻毛太郎(プロフ) - Chaosさん» 本編の方でもコメント頂き、こちらでも…！！嬉しい限りです💜🥺2頁でやれることを5頁ぐらいでやってますが、そろそろこちらも一区切り着きそうです。ぜひ、最後までお楽しみ下さい！！ (2022年1月28日 10時) (レス) id: 642d1e8526 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：鼻毛太郎
| 作成日時：2021年12月25日 12時
