161:ギャルと遺言 ページ11
あの言葉以降、気が軽くなった。
だから、ここへ戻ってくる時も深く悩まなかった。
馴染みのパン屋の店員に、蝿頭が憑いていたから祓ってやった。
そしたら、死ぬほど感謝された。
生々流転か。
まぁ、あの人の言葉通りなら移り変わり人は生きていくんだし、それもいいかもしれない。
移り変わるにはもう十分な程に自分は“感謝”を貰った。
七海はサングラスを外す。
「Aさん。貴方の言葉、実は結構救われた面が多かったです」
なんの事か分からず、Aは「え…?」と七海に尋ね返す。
七海は気が抜けた様に口元を緩ませた。
その顔は、彼が昔の事を思い出して笑う時の顔だった。
Aはその顔を知っている。
呑む時、彼は酔いが回るとその顔をする。
「生々流転。言っていたでしょ、私に説法を説いてやるって。人は生まれ死んで、移り変わり生きていく。当初は、寺の事なんて全く継ぐ気もない貴方が何を一丁前に説法なんか…なんて思っていたのですが…」
七海はAを見る。
今の今まで、この言葉に救われ続けていた。
「適当で、チャラついていて、嫌な程に自由で、人の事なんて考えてるのか考えていないのかも分からない。それに、距離感の詰め方は最悪ですし、腹が立つ程明るくて。………でも、嫌いにはなれませんでした。それを帳消しにする程、貴方は素敵な先輩だったので」
饒舌になる七海に、Aは不安げな顔をした。
七海、今お前は何を考えている?
何故そんな事を言い始める?
「七海…?何言って、嫌だな、突然褒めるなよ…七海……なぁ、おい、お前可笑しいよ…?」
「サラリーマンだった私も、また死んでこちらの世界に生まれ変わった。そう思う事で幾分か楽になれました」
「七海、なぁ、七海…!」
「……貴方が死ぬのは、まだまだ惜しいですよ。私の時のように貴方は他人を救ってくれないと」
Aはその時理解した。
ゾッとした。
血の気が引いた。
七海が何を受け入れようとしているのか、Aは理解してしまった。
Aは咄嗟に七海の腕を握った。
痛い程に握った。
「やめろ、七海…やめろ…ッ」
ダメだ、やめてくれ。
そんなこと受けいれようとするな。
七海はAを無視し、真人に向き合った。
「悔いはない」
Aの中で全ての時が止まった。
それは、突然の出来事だった。
暗い光景に、差し伸べられたが如く一筋の光が差し込んだのだ。
パリンと割れ、飛び込んで来た異分子。
虎杖悠仁。
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鼻毛太郎(プロフ) - 華花。さん» コメント有難うございます!これでいいのか...?と悩む時期が続いていた中、温かいコメントを頂けて本当に泣くほど感謝してます;;現在5章目を製作中なので、しばしお待ちを…!今後もギャルと呪術を宜しくお願い致します! (2021年4月21日 11時) (レス) id: 642d1e8526 (このIDを非表示/違反報告)
華花。(プロフ) - いつも緊張して送れませんでしたが初コメント失礼します!もう作者様は言葉選びから構成まで最高すぎます…素敵な作品を生み出してくれてありがとうございます! (2021年4月20日 23時) (レス) id: 2bd2296ed7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:鼻毛太郎 | 作成日時:2021年3月1日 0時