【呪術廻戦】ギャルと呪術-3-

138：ギャルと時間外労働 ページ38

今ばかりは、厄介な呪いが“加護”に変わってくれたとしても、やはりAがあの呪霊に触れられる役に回るのは相当なリスクだ。

｢安心しろよ、バカスカ触らせる程私は安くないって。基本、お触り禁止だよ｣

軽口を叩くが、その言葉には凶暴性が帯びている。

｢呑気にお喋り？｣

真人が拳に呪力を帯びさせ飛び込んでくる。
避けるAと七海。
七海はチラと自身の時計に目をやる。

あと数分。
労働時間が時間外に変わる。

｢Aさんッ、｣

七海が声を上げた。
視線だけの会話で、二人は今後全ての算段を把握する。
頷くA。
互いに理解し合うと同時、地下道の広い方へと走った。

追いかける真人。

開けた地下道には、もう逃げ場は無かった。
逃げるとすれば、元きた道を戻るだけ。
しかし、その入口を塞ぐよう真人が居る。

鉄柵に悠々と座る真人。

｢さて、もう限界じゃないかな｣

くす、と笑う。

七海とAは彼を見上げた。
七海がため息を漏らし、ネクタイを緩める。
鉈はもう使わないので背にしまう。

｢Aさん、貴方この後呑みに行こうって言ってましたよね｣

｢え〜、七海心配してくれんの？｣

真人は二人の会話に首を傾げる。
死でも覚悟しているのかな、と。だから、諦めたような会話しているのか。

だが、Aの表情が諦めと該当しない。

狩りをするネコ科のように、意地悪げに瞳に弧を描かせゆっくりと手を持ち上げた。


人差し指と、薬指を立てる手印。


｢一瞬で決めてくれよ、七海。じゃなきゃ私、ぶっ倒れてお前と呑みに行けねーから｣

｢分かってますよ、さっさと終わらせます。時間外労働、ですから｣


七海が腕にネクタイを巻いたと同時だった。

｢『阿羅漢』｣

Aが言葉を紡ぐ。
呼応して大きくなるのは、Aの呪力。
いや、それだけじゃない。
七海の呪力までもが桁違いに上がっている。


呪術師二人による、同時の呪力解除。


時間による呪力の制限。
言葉による呪力の縛り。


｢面白い！｣

興奮と無邪気な子供のような声で、真人は声を上げると地面に降り立った。

｢七海クン、呪力開示どうぞ｣

｢言われなくとも｣

させるか、真人が七海目掛け走る。
しかし、真人に迫るはA。

｢後輩が頑張んだから、話聞いとけって｣

ギラついた光を瞳に宿らせ、Aは真人に拳を浴びせる。
ギリギリで避ける真人。
今度は、彼女の拳を受ける訳にはいかない。


困ったな、彼女の呪力
さっきとは倍所か桁違いじゃないか

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