【呪術廻戦】ギャルと呪術-3-

132：ギャルと継ぎ接ぎ ページ32

＿＿＿＿。


地下道に、二人の足音が反響する。
磨き上げられた革靴と8ホールの編み上げブーツ。

｢今日の服装、やけにいつもと違いますね｣

風を切る音と共に七海は鉈を振る。
鉈から散った血液が、地面に弧を描いた。

｢お気にの服、汚れたら最悪じゃん｣

Aの後ろから、一体の呪霊が襲いかかる。
不自然な形は、例の改造呪霊に間違いなかった。
Aは振り向くと、躊躇する事素手で呪霊を貫く。

引き抜いた腕は血に塗れ滴り地を濡らす。

Aの体は、既に怪我をしているかの如く血に塗れていたものの、それら全てが呪霊の血。
勿論、Aは期待を裏切ることなく無傷である。

｢髪も結んで正解だった｣

普段は見慣れないAのポニーテール。

五条さんが大切に保存している写真フォルダーだけで見た事があるって話をしたら、Aさんは怒るんだろうか。
なんて内心思う七海。

｢術式無しでこの数を祓う、ですか。相変わらず人間離れしてますね｣

｢私の呪力は貴重なんだぞ〜？いざという時の為に、溜めておかないと｣

間延びした声で言ったあと、Aは｢さぁて、｣とひと呼吸おいた。
そして、地下道の奥へ向けて荒々しく声を投げる。

｢出てこいよ、こっちは機嫌悪ィんだからさぁ。あんまり焦らすと、キレてスクラップにしちまうぞー｣

ゴミ捨て場に素敵なオブジェ作ってやるよ、Aは意地らしく付け足す。
ギラついた凶悪な瞳は、胸糞の悪さからか戦闘で生まれた高揚感からか。

地下道の奥から、別の足音が響きこちらにやってくる。

｢はは、口が悪いっていうのは知らなかったなぁ。可借夜A｣

継ぎ接ぎだらけの青年。
いや、青年の形をしているが彼は間違いなく呪霊であった。

彼の言葉に、Aと七海は顔を顰めた。
七海は目の前の呪霊から目を離すことなく、隣のAへ尋ねる。

｢…どういう事ですか｣

｢こっちが聞きたいっつーの。…あんなのが私の知り合いなわけねーだろ｣

しかし、間違いなく呪霊はAの名を呼んだ。
Aが有名なのは呪術界隈だけだ。
五条のように、呪霊にも界隈にも名が知れている訳では無い。

呪霊は余裕げにくすくすと笑う。

｢いやぁ、でも良かった！可借夜Aだけ誘き寄せても、俺の練習にはならないからね。うん、俺は運がいいや｣

嘗めたクソガキ。
彼の口ぶりは、それを真っ先に連想させた。

Aが指の骨を鳴らす。

｢さっさと終わらせて呑みに行こうぜ｣

｢ええ。手早く済ませましょう｣

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