【呪術廻戦】ギャルと呪術-3-

104：ギャルとフルコン ページ4

硝子が彼の絶望的限界を見るのは、これで3度目。

1度目は、彼の親友＿＿夏油傑とAが恋人になったと発覚した時。
2度目は、その親友が離反し必死に平静を保とうとしていたAを見た時。
3度目は、今。

2度目から随分時間が空いたな。なんて、硝子は他人事のように頭に描く。

｢辛い……なんだよ、辛すぎる…もう、僕とAなんて出会わない方が絶対平和だったんだ……｣

なんだお前、思春期の女子高生か。
硝子は聞こえるほど大きなため息をつく。

｢意気地無し｣

｢う゛ッッッ｣

1hit

｢ヘタレ｣

｢ぐぅ゛ッッ｣

2hit

｢クソダサい｣

｢ん゛ッッッ｣

3hit目で、五条は心臓を抑えソファーに倒れた。
全部刺さった様子なので、フルコンボってとこだろう。

現に本当の話だ。いちいちこの男相手にオブラートに包んでやる必要は無い。
大体、愛の重い男は見苦しい。
そろそろこの男のケツをバットで叩いてやってもいいかもしれない。

｢五条、お前が燻っている間に先輩が他の男の所に行ったらどうするんだ？夏油の時みたいに病むか？｣

｢先輩に男が出来るのは問題ない、五条家の力をフル活用してでも相手は消す｣

｢御三家の力は正しく使えよ｣

割と本気の顔をして言っているのがより怖い。
やれやれ、と硝子は一息置いてまた口を開く。

｢昨日何かあったのは模索しないよ。大方、意識しているのはお前の方だけだろうし｣

｢…はい、ごもっともです｣

五条は再び両手で顔を覆った。
あぁ、これは思い出した上で言っている言葉だな。
硝子は真っ赤に染った耳を眺めながら思う。

本当に、意気地無し。
見てて苛々してしまう。

｢そろそろ、少しは行動したらどうなんだ？｣

｢…傑が居なくなってまだ1年も経ってねぇのに？｣

女々しい男め。

｢これはA先輩を思う同性の後輩としての意見だが、いつまでも亡くなった男を思い続けるのはかなり酷だと思う。次の段階に進むべきだよ｣

言ってやると、五条はムッとした顔を見せた。

｢Aにとって、傑は“ただ死んだ男”じゃないんだぞ？｣

そんな事わかってるよ、硝子は顔を顰める。
Aは自分が呪われた事で、追い詰められた夏油にチェックメイトを打ち込んでしまったと思っている。
きっと、自分のことを当時は相当責めただろう。


誰のせいでもないのに。
なるようになっただけなのに。


でも、亡くなった人間を思い続けるのはやっぱり酷だ。
特に、この世界に居るのなら。

愛は最も厄介な呪いなのだから。

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