093:ギャルと埋葬 ページ43
ベランダから乗り上げてでも帰りたい。
七海は先輩二人の会話を横に思い描く。
「七海は何飲みたい?」
「強いやつ」
「お、酔う気だね〜」
違います、酔わずには居られないんです。
Aは、「外に出るから着替えてくるわ」とリビングを出て行った。
部屋から出ていくのを完全に見届けると、五条は見計らったように七海を呼んだ。
七海は、視線だけを五条に向ける。
「…先輩、どうだった?」
寝てる時、という問いだろう。
「…夏油さんのこと、呼んでましたよ」
包み隠さず、七海は言った。
Aは寝ている時、確実に呼んでいた。
元恋人___夏油傑の名を。
五条はその言葉に、サングラスの奥の瞳を丸くした。
力が抜けたようにソファーに座り込む。
「…そっか……」
背もたれに全身の体重を埋め、天を仰ぐ。
オレンジ色が強い暖かみのある照明が、五条の瞳の中で煌く。
「まぁそりゃあ…ね。…まだ一年も経ってないし………」
七海は黙っていた。
きっと、今この男が脳裏に浮かばせているのは去年の”百鬼夜行”だろう。
「A、口ではもう平気とか言ってるけど……辛いね」
五条は呟き、眉間を抑えた。
去年、彼らが築き上げた青春の欠片は、最後の欠片なんて一片も残さず綺麗に崩れ去った。
ボロボロに、粉々に。
それでも、綺麗に崩れたと思っている。
粉々に散った欠片達を、彼らはゆっくりと埋葬していく。
Aだけが、欠片を葬れずにいた____。
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鼻毛太郎(プロフ) - Reginaさん» コメントありがとうございます!遊びに来て頂き誠に嬉しいです😭🤍作品の楽しみ方も、書いている側としてはとても嬉しく、本当余すことなく楽しんで頂けてとってもらぶ…… 本編、まだまだ続きますが、是非楽しんでいってください!! (2月1日 12時) (レス) id: 642d1e8526 (このIDを非表示/違反報告)
Regina(プロフ) - 高専編から読ませていただいて本編に来ました!内容はもちろんのこと、毎度イメソンが天才すぎてイメソン聞きながら読み返したりしてます!エンディング波のゆくさきで考えていらしたのも物語の深さにマッチする曲だと思うのですごく感動しました!!応援してます! (2月1日 11時) (レス) @page50 id: c70aaf3a6d (このIDを非表示/違反報告)
鼻毛太郎(プロフ) - 伝説のパンダさん» コメントありがとうございます!!いえいえ、全然大丈夫ですよ!!4本もシリーズがあるので、流石に間違えることもありますよね...私でさえ「これ3だっけ、4だっけ」ってなるので…0の方も読んでいただきとっても嬉しいです!!まだまだ続くので、今後もお楽しみに! (2021年3月8日 9時) (レス) id: 642d1e8526 (このIDを非表示/違反報告)
伝説のパンダ - 申し訳ありません。4のほうにコメントしたつもりが、なんらかの手違いでこちらにコメントを飛ばしてしまったようです。本当に失礼なことを…次はもう少し興奮が引いたときにコメントします…すみません…。 (2021年3月8日 8時) (レス) id: ec9a309dee (このIDを非表示/違反報告)
伝説のパンダ - もんのすごく面白いです!!!夢小説はめったに読まないので、まぁ暇つぶしに…と思って読み始めたのがこちらの作品で、不覚にも大沼にハマってしまいました…本当に好きです!0のほうのお話、パパ黒大好きなのでそちらも凄く好きです!今後も応援してます! (2021年3月8日 8時) (レス) id: ec9a309dee (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:鼻毛太郎 | 作成日時:2020年12月19日 3時