【H×H】赤ちゃんはどこからくるの？-7-

340：ズルいじゃん ページ42

Aの素顔がついに晒された今、会場の盛り上がりは最高潮であった。
金銭のやり取りを交わす者も見受けられる。
実況も声を張り上げ、興奮したよう騒ぎ立てる。

中から現れたのは、なんと銀髪の美女だったと。

けれど、そんな事ヒソカにとっては＿＿＿＿いや、この試合を見に来ている念能力者にとってはどうだって良かった。


とんでもない試合を見せられている。
よくあの業火の中、着ぐるみと上着を犠牲にして助かったものだ。
とはいえ、Aの体からは所々だが未だに煙が上がっている箇所が見受けられる。
無傷では済まなかったらしい。


これには少々ヒソカも腹立たしさを覚えた。
面白いけど面白くない。


だが、注目するべき点はそこだけでは無かった。


Aは、あの業火に包まれた中、一瞬間合いを詰めリンフォンの片足を叩き折ったのだ。
そこらの念能力者とAとでは、持ち合わせる精神力が違う。



「ヒソカ、さっきの話本当なのかよ」

リングを見つめ思案するヒソカの脳内へ、キルアの声が割り込んだ。
目を向けると、キルアは神妙な顔をして「どうなんだ」と言葉を詰める。

「ボクがここでウソをついてどうするの♢」

ヒソカの言葉に、キルアは口を噤んだ。


姉の『エデン』が盗まれた。


幼少の頃から、姉が『時を加速』できるというのは勿論知っていた。
全く便利な能力だ。
速度は勿論、物体の劣化加速、細胞活性の促進。
本人曰く出来ないのは、生命の加速。
0から1ではなく、1から2を作り出すこと。

以前、イルミにその事を尋ねたら


「キル、今後その話は姉さんにしないでやって」


と、キッパリ言われた。


何かがあったのだと思う。
ともあれ、月日は過ぎてその不可思議な能力は『念能力』であると気づいた。


そして、姉はそれを盗まれて、取り戻して盗んだ相手とケリをつける為に家出をした。
リンフォンと対戦しているのは、彼がその“盗んだ相手”を知っているから。


だが、ヒソカ曰くAがリンフォンと対戦するのはそれだけじゃないと付け足した。



負ければ、自身の情報が全て奪われる。
それ即ち、ゾルディック家の情報が奪われるという事。


だから、この試合でAは絶対に負ける訳にはいかないのだ。



「なんで全部…黙ってんだよ…」


膝の上、キルアはゆっくりと拳を握った。








チリと痛みを覚える。
幾つか負った火傷が、徐々に痛みを帯びていく。

「もうそれで私の攻撃を避ける事は出来ないな」

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