335:水膨れ ページ37
男が言葉通りに動くと、ちゃんと男は箱に辿り着いたからだ。
見えもしないのに、どうやって分かったんだろう。
ゴンは目をキラキラとさせる。
「す、すっげーーー!!!どうして分かったの!?」
「長年盲目をやっていると、勝手に体が生き抜く術を編み出しているのですよ」
男は箱を拾い上げながらゴンへと述べた。
難しい話をしていることだけは察して、ゴンは「そっか」と眉を寄せる。
ふと、男が平気で拾い上げているのを見て、ゴンは尋ねた。
「おじさんは怪我しないの?」
俺はするんだよね?
付け足すと、男はゴンへと言葉を返す。
「そういう約束を、この箱としているんです」
私は怪我しないようにって、そう続ける男。
ゴンは一層訳が分からなくなった。
眉を寄せて首を傾げるゴンに、男は笑いながら「君は散歩しているのかね?」と尋ねた。
「あ、うん、まぁ____、」
「部屋に居るのも、もう飽きたという所かな?全治二ヶ月……いや、本当は四ヶ月か」
「え……」
今の言葉。
ゴンは、どうしてという気持ちで男を見上げた。
口髭の下、口元を緩く持ち上げて笑う男の姿は、まるでなんでも知っていると言わんばかりの顔だった。
ゴンが問う前に、男はひらりと片手を上げて去っていく。
「気に病むことはない。君の腕なら、1ヶ月で治るようだよ。では、“ゴン=フリークス”君」
そう言い残した男の背を、ゴンは不思議そうに眺めて見送った。
どうして知っているんだろう。
あの人…
何者だったんだろう
「痛っ、」
骨折した腕、その指先にチリとした痛みが走った。
ゴンが目をやると、指先がじわりと熱を持ち水膨れのようになっていた。
水膨れといっても軽度で、前に育て親であるミトのヘアアイロンをふざけて使い指先がじゅっと当たった時の感覚に似ている。
痛みは指先からすぐに離れて、不思議な感じだとゴンは指先をじっと見つめた。
痛くはないが、水膨れはやっぱり残っている。
「言わなきゃ分かんないぐらいだけど…」
男の姿はもうない。
キルアに聞けば、もしくはズシ、いやウイングさん。
誰かに聞けば、彼は何者でこの傷は何かが判明するのだろうか。
その時、ゴンの頭の中にふとAが浮かんだ。
Aなら知っているかもしれない。
思ったものの、すぐに「いや、でもAは明日試合だから忙しいかも…」と先程見た掲示板を思い出してやめた。
そういえばAの相手。
『リンフォン』ってどんな人なんだろう。
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鼻毛太郎(プロフ) - アネモネさん» ありがとうございます!とっても嬉しい限りです…;;夢主好きになってくれるなんて、めちゃくちゃ嬉しい…律儀というか天邪鬼というか健気というか純粋というか、そんな夢主ですが今後も宜しくお願い致します…!! (2021年7月25日 10時) (レス) id: 642d1e8526 (このIDを非表示/違反報告)
アネモネ(プロフ) - 面白すぎて、一気にここまで読んでしまいました………。今まで読んできた夢主ちゃんの中でトップレベルで好きです…!!ヒソカとの絡みで素直になれないところとか本当に可愛すぎます……!!作者様のペースで、これからも更新頑張ってください! (2021年7月24日 18時) (レス) id: 3b50ba95a6 (このIDを非表示/違反報告)
鼻毛太郎(プロフ) - ☆さん» コメントありがとうございます!とっても嬉しいお言葉頂けてモチベ上がります;;ヒソカもお姉さんもこれからまた関係が動いていったり、第三者が介入してきたり今後色んな事が起こりますが、是非今後も楽しんでくださるとありがたいです!お楽しみに!! (2021年7月9日 22時) (レス) id: 16ef441d86 (このIDを非表示/違反報告)
☆(プロフ) - 続編おめでとうございます。物語の構成があまりにも面白くて、大好きな作品です。ヒソカの性格も私の思い描いている通りで、また、彼と絡む夢主ちゃんの強さや弱さがとても大好きです。これからも無理なさらずに頑張ってください! (2021年7月9日 20時) (レス) id: 56780b611d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:鼻毛太郎 | 作成日時:2021年7月9日 1時