286:えーーー ページ38
堰き止めていたものが全部溢れた。
やけくそだった。
でも、吐き出して幾分か楽になったような気がする。
気がするだけで、顔もまともに見れなかったので本当に気がするだけだった。
ヒソカは口元を緩めて、静かに尋ねる。
「いつから?」
「そんなの、分かんないわよ…っ」
分かるわけない。
Aは、生理的に溜まった目尻の雫を拭う。
頬が凄く熱い。
「ボクはね、自覚したのは割とついさっき。最終試験で、君と戦った時」
Aの酷く苦しそうでムカついてると言わんばりの顔。
余裕なんかあるわけないと言ったA。
その時ヒソカは確信した。
あぁ、絶対に敵わないな。
完全敗北だな、と。
「でも、本当はもっと前から予兆は出てたのかもね。ボクら、元が特殊な関係だからさ♢」
自覚するのに時間がかかった。
ヒソカはAの拭う腕をとる。
細い手首。脈拍は少しだけ早い。熱い。
「A、」
呼んでやると、こちらを見上げる。
「じゃあもう、いいってことだよね♧」
そういう関係ってことだよね。
「必要以上に触れても」
鼻先を合わせる。
数分前と一緒の口付けでも、持つ意味は全く違う。
あと数cm、少しだけ顔を傾ける。
「好きなだけ、君にしても」
数mm、触れ合う____。
「ダメ」
重ねるその瞬間、顔の間に手を差し込まれ阻まれる。
ヒソカの顔面がAの手により押し戻され、思わず尋ね返してしまう。
「は?」
何だこの手は。
なんだ今の「ダメ」ってのは。
押し戻された手を取り、ヒソカは瞳だけで訴えるもAはけろりとしたまま。
「まだダメ」
今度は、先程よりもきっぱりと述べる。
「いやちょっと待ってよ、君雰囲気とかさぁ♧ダメってなに、ここまで来てダメってなに???」
「ダメなもんはダメよ。まだ待ってって言ってるの、頭ごなしに振ってる訳じゃないのよ」
「え、この流れでボク振られてるの???」
君、好きだって言ったじゃん。
泣きそうな顔で言ったじゃん。
それを、え????
Aは、平然とした顔で腕を組む。
「別に振ってはないわよ。ただ、まだ恋人になる訳にはいかないって言ってんの」
「…なんで?」
「弟差し置いてそれは出来ないわよ」
当たり前でしょ、と述べたAにヒソカは肩を落とした。
やっぱりか。
予想してなかった訳では無い。
とはいえ、好きとは言われても弟以下か。
なんて思っていると、Aは「それに、」と続け始めた。
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鼻毛太郎(プロフ) - みこさん» コメントありがとうございます!新しい扉開けたようで、私としてはとても嬉しい限りです限りです😂現在進行形で長く続くシリーズではありますが、是非引き続きお楽しみください!! (2022年6月1日 22時) (レス) id: 642d1e8526 (このIDを非表示/違反報告)
みこ(プロフ) - 初めてコメントさせていただきます...!実は私ヒソカさん、可もなく不可もなくくらいだったのですが...この話を読み始めたらなにやら目覚めました...笑← 一気に読み進めてしまい、夢中になっております!!続編もウキウキしながら楽しみに読みます!! (2022年6月1日 20時) (レス) @page50 id: e77f4d9956 (このIDを非表示/違反報告)
鼻毛太郎(プロフ) - ポテトさん» 毎回ポテトさんからコメント頂けて本当に有難いです;;私こそ、ポテトさんからのコメントを楽しみにしているんですよ…段々クロロとのシーンが刻々と迫ってきていますね…私自身も皆さんにお見せできる日を楽しみにしています!こたらこそ、以降も宜しくお願いします! (2021年7月9日 1時) (レス) id: 642d1e8526 (このIDを非表示/違反報告)
ポテト(プロフ) - 続編おめでとうございます。本当に一話一話を読むのが、楽しいです。これから、お姉さんがクロロとどう関わっていくか楽しみです。ヒソカとの、いつもの会話が久しぶりに見れて、「やっぱりこれだよな」と思い、最高でした。これからのお話も楽しみにしています。 (2021年7月8日 22時) (レス) id: 1bfcbf4b39 (このIDを非表示/違反報告)
鼻毛太郎(プロフ) - ポテトさん» ああありがとうございます;;凄く達成感を感じますね…この展開、ネタ帳を見たら昨年の9月に決まってたみたいでビックリしました。温めていたものを皆さんに見せられてとても満足しています。神回まで言われて、本当に嬉しい限りです…;;;; (2021年6月29日 0時) (レス) id: 642d1e8526 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:鼻毛太郎 | 作成日時:2021年5月30日 0時