彼が消えて早5年。今私は...3【降谷零・安室透】

99.side降谷 ページ21

もう一度Aの頭に手を置いてから、ぶん殴った恐らくストーカー野郎であろう相手に歩み寄る。




いってーな...と呟きながら殴られた頬をさすっているそいつは、恐らく30代後半だろう。スーツを着ていてパッと見ただのサラリーマンだ。







歩み寄ってきた俺に気がついたのか、キッと俺を睨んできた。それに対し、俺は笑顔を作る。笑顔といっても、いつもの安室透が浮かべるような笑顔ではなく、バーボンとして笑っている時のようなものだが。






「...ぉお前！！！Aちゃんをエスコートしてた奴だろ！？？なんでお前なんかが！！！」








俺の笑顔をみて少しひるんだものの、気を持ち直してそう言ったそいつは、俺に向けてナイフを向けて走り込んでくる。が、遅い。






それを軽く避けた俺は、そのまま鳩尾にグーに握った左手をフルスイングする。







全力のそれが決まったストーカーは、がはっと言って崩れ落ちた。







気絶したそいつを念の為、そいつのポケットから出てきたロープを使って拘束する。握っていたナイフは回収した。






ひと通りの作業を終えて、Aを振り返れば、俺が掛けてやった上着を握りしめてガタガタと震えていた。







思わず顔を歪めてAに近づき抱き寄せる。ギュッと少し力を入れて抱きしめればAは「れい...？」とか細い声で俺を呼んだ。






「...あぁ。」







どう答えるか少し迷った結果、掠れた声でそう答えれば、Aは俺の服を握ってくる。その手はまだ震えていて。




少し腕を緩めて、額を合わせると同時に目も合わせる。







「A。すぐ来てやれなくて、悪い。怖い思い、させたよな...」









そう言って頭を撫でてやると、Aの口から嗚咽が漏れ始めた。「こわ、かっ...た...っ！！」途切れ途切れにそう言って堪えるように涙を流すA。昔と変わらないその泣き方に、俺も昔のようにAを抱きしめた。

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