【呪術廻戦】ギャルと呪術-1-

003：ギャルと夜蛾ちゃん ページ3

2018年____。

｢夜蛾ちゃん私が育てたお肉あげる〜｣

｢夜蛾先生……じゃあないか、夜蛾学長な。｣

都内某所、高級焼肉店の個室に二人は居た。
一人は、強面サングラスの男。もう一人は、華やかな空気を纏った金髪の女。というかギャル。
そんな二人が肉を囲む光景は、端から見れば奇怪な光景に見えるだろう。

「お前だけだぞ。俺のことをそんな風に呼ぶのは。」

「いいじゃん、可愛くて。夜蛾ぴよりはマシっしょ。」

夜蛾ちゃん____夜蛾正道は、自身の皿に肉が乗っていくのを黙って眺める。
肉汁滴る如何にもお高いお肉。
東京都立呪術高等専門学校にて学長を務める夜蛾にとって、高級店での会食はよくある話だし、呪術師の給料というのは案外いいものだ。
しかし、この場で夜蛾が財布を開くことはない。それもこれも、この目の前の女___＿可借夜Aが”奢るから好きなだけ食べて”と言っているからである。

「っかぁーー！！やっぱさ、ビール飲めるようになって漸く大人の階段登ったわ〜って感じするよね。私最近飲めるようになったの。あ、このお肉は貰うね。」

片手にトング、片手にジョッキ。
まるでプロの焼肉師。
ではなくて、こんな彼女だが実はちゃんとした呪術師の一人でもある。
所謂、高専を卒業した生徒の一人であり、彼女が一年の頃には夜蛾が担当として受け持っていた。

自分のペース赴くままに飲み食いし、喋りたければ喋るA。
相変わらず…と思いながら、夜蛾はAが先ほど乗せた肉を口に運ぶ。

「最近は、どうだ？」

「最近？あー、研究の方はボチボチ。呪霊の研究専門にしてる奴なんてさぁ、後にも先にも私しかいないんだもん。海外もさぁ、まぁちょっと居るかなってぐらいで、」

「そっちじゃない。……”呪い”の調子だ。」

Aのマシンガントークをすり抜け、夜蛾が静かに尋ねる。
その言葉を聞くと、Aはヘラっと笑って見せながら「あぁ、そっちの」と呟いた。


「もうこんなとこまで＿＿＿呪われてんの。」


薄めの長袖。その左袖を捲り、空いている片手で襟首をずらしながらAは夜蛾に自身の左肩を見せた。
左手首を通り左肩、鎖骨は少々。刺青と言われれば随分悪趣味、そもそも”それ”は到底刺青からは程遠い。
Aの体を侵食するように、訳の分からない紋様が刻まれている。


「最近は調子いいよ…呪力抑えてるとさ、進行具合遅いし。」

袖を下ろしながらAは言う。


Aは、高校三年の夏に呪われた。

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