040:馬鹿正直 ページ40
夜蛾は言いながら、短くため息をついた。
Aは横目で夜蛾を見る。
「呪術師の上層部ってどんな感じ?」
珍しくこの界隈事情に食いついたAに、夜蛾は驚きの目を向ける。
お前興味があったのか。
それをAは感じ取ったのか、即座に「違う違う」と訂正した。
「興味ある訳ねーだろ、この界隈に。何時もずーんと構えてるアンタが、辛気臭い顔してると気持ち悪いんだっつーの!…だから、聞いてやろうかと」
Aの言葉が尻すぼみに小さくなる。
分が悪そうに唇を尖らせる姿に、夜蛾は初めてAに可愛げというものを感じた。
こんなのでも、結局は自分の生徒。
可愛いヤツめ、と思ってしまうのは当たり前なのかもしれない。
夜蛾は表情を緩めると、口を開いた。
「きっと、お前が思い描く以上に腐ってるよ。前に言っただろ。呪詛師が最近界隈を騒がせている話」
「あー、なんだっけ呪詛師って…人殺すんだっけ」
術式でな、と夜蛾は付け足す。
「そいつの話で上は誰が対処するかの擦り付けあいだ。結局、痺れを切らせて俺が引き受けることになったんだがな…」
「夜蛾って断る能力無さそうだもんな」
「余計なお世話だ。お前が思っている以上に、嫌なものは嫌と言う」
言ってやると、Aは食べきったアイスの棒を口に咥えながら、どうかなと肩を竦める素振りをみせた。
「でもまぁ、聞く限りロクでもねーなこの界隈。きっしょ、鳥肌立っちゃったね」
Aがわざとらしく腕を摩った。
しかし、Aのそういった軽い言葉で救われる人間もいる。
夜蛾もその一人だ。何も知らないからこそ、Aは身も蓋もないことを言える。
「夜蛾よぉ、アンタ私をボコボコに出来るくらいには強いんだから、サクッと解決して頭硬いジジイ達へ目にもの見せたれ」
「お前は対して強くないからボコボコに出来るんだぞ」
「そこ態々触れるなよ。これから強くなるんだっつーの!」
Aはムキッと力こぶを作って見せたが、全く筋肉のついていない細い腕では悲しくも力こぶは出来ない。
呆れたな、と夜蛾は短く息つく。
「A、」
ふと、夜蛾はたった一人の生徒の名を呼んだ。
「あ?」と、何時もの返事が返ってくる。
「別に、無理に強くならなくてもいいんだぞ」
予想してなかった夜蛾の言葉に、Aはぱちぱちと瞬きした。
夜蛾はそのまま話し続ける。
「これは、教師としてではなく夜蛾正道としての意見だ。真面目に聞くか聞かないかはお前に任せよう」
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鼻毛太郎(プロフ) - ぱぴこさん» コメントありがとうございます🙌🤍強くてかっこいいクズが好きなのでこの結果なのですが、気に入っていただけたならばとても嬉しいです…!是非、引き続き楽しんで頂けたら幸いです^^ (1月21日 2時) (レス) id: 642d1e8526 (このIDを非表示/違反報告)
ぱぴこ - パパ黒かっこよすぎ (1月21日 0時) (レス) @page34 id: c43eafab12 (このIDを非表示/違反報告)
鼻毛太郎(プロフ) - 黒さん» コメントありがとうございます!🙌裏側ではいつかに向け百鬼夜行をちまちま書き溜めておりますので、いつか皆さんにお披露目できる日を楽しみにしております😌それまで暫しお待ちを…! (2022年2月16日 21時) (レス) id: 642d1e8526 (このIDを非表示/違反報告)
黒 - ギャル夢めっちゃ好きです!!🥺鼻毛太郎さんがかく百鬼夜行楽しみです😚 (2022年2月16日 17時) (レス) id: ab6a15c201 (このIDを非表示/違反報告)
鼻毛太郎(プロフ) - あーさん» 頭いいなんて言われてだいぶニマニマしてます😎とはいいつつ、本人は過去に適当に張った伏線のおかげで矛盾だったり色々苦しめられているんですけどね!!笑皆さんが読んでくれれば私は嬉しいんです🥺素敵なコメントありがとうございました!🌸 (2022年1月31日 1時) (レス) id: 642d1e8526 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:鼻毛太郎 | 作成日時:2020年12月27日 22時