【呪術廻戦】呪術とギャル-0-

010：斬釘截鉄 ページ10

「……」

「何か質問は？」

夜蛾はチョークを置き、Aの方へ向き直る。
しばらくの沈黙が辺りを埋めた。

よく喋るAの沈黙イコール脳内処理の時間である。

数秒後、Aはガタリと音をたて立ち上がった。

「ここ仏教校じゃねーの！！？」

がくん、と夜蛾が肩を落とす。

そこからか。

「今まで馬鹿正直に信じていたのか…」

「だって、アンタ私に勧めた時『仏教校』って言ったじゃん！！」

「表向きは、だ。正しくは、表向きは私立の宗教系学校を装っている」

「都立ってついてんじゃん。待って、国の金でこんな意味不明な学校運営されてんの！！？」

「ほう、それが分かる頭はあるか」

ぽかん、Aは間抜けに口を開ける

「…私、そこに入学しちゃったんだ」

「お前の入学は、実際のところかなり前から決まっていた。母親が、そういう遺言書を残していてな」

Aは椅子に座り直す

「…母さん、呪術師って奴だったんだね」

「ショックか？」

「いや、別に。未だに、それが何かとか実感わかねーし。…ただ、」

夜蛾はAの言葉の先を黙って待った。

「ただ、仕事で死んだってことは…呪術師って死ぬ仕事なんだ。って」

夜蛾は少しだけ瞳を丸くさせた。
思った以上に聡い子供だ、と気づく。

右も左も分からない、脳味噌も足りない、その場の空気で生きている子供。

あの天才呪術師、『可借夜 綺羅』の娘にしては随分出来損ないが生まれたものだと思っていた。
こんな奴を、教育…？
何を馬鹿な、まだ『窓』としての方がいいだろう。

そう思っていた。

あぁ、そうか。
夜蛾は察する。

彼女の母親と父親が、何故今まで何も教えてこなかったのか…



この娘に、『ただの少女』として過ごせる時間を、最大限に与えてやりたかったからだ。



「…怖気付いたか？」

「そりゃ怖いでしょ」

「今からでも、退学は遅くない」

「馬鹿言うなよ。今更転校したって、何処も友達の輪できちまってるっつーの」

Aはヘラヘラと笑うと、徐々に表情を緩めていった。

「そっかぁ…母さんが遺言書に…か…」

ぐーッとAは伸びをする。

「母さん、どのくらい強かったの？」

「特級呪術師。頂点だ」

言うとAは「よくわかんねーってば」と笑う。
そして、長く息を吐いたと思ったら、パンと一回拍手した。

「まぁいっか。オッケー、心構えできた。普通…じゃいられなさそうだし」

夜蛾はAをじっと見る



「うん、いいよ。呪術師、なるわ」


＿＿＿。

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