653:カイト ページ7
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『話すのは…二年ぶりか?』
通話口から聞こえた懐かしい声がそう言った。
そんなに経ってる!? Aは素っ頓狂な声を上げて、年月を指折り数えてみる。
あらやだ、本当だ。
「そんなに経ってるなんて思ってなかったよ。……ん゛ん゛、そんなに経ってるなんて思ってなかったわ」
『わざわざ口調を改めるぐらいなら、最初から昔の口調で喋ったらどうなんだ』
Aの咳払いに、通話口の向こうから呆れた声を漏らすカイト。
Aはその言葉に、ムッと顔を顰め「嫌よ」とキッパリ返す。
「身相応の口調にした方がいいってジンさんに言われてから、私は12歳でそういう言葉遣いは卒業したの」
これでも、名門一家の淑女なの私。
得意げに胸を張ると、カイトからはため息混じりに『キレたお前はそうは見えんがな…』と小さく付け足した。
なにか? なんて、言葉が返ってきたもののカイトは『いいや、何も』と一言返し話題を変える。
『それで、どうしたんだ?こんな早朝に』
「どうしたって、」
ちゃぽん、Aが言いかける中、耳に入った水音にAは言葉を切って「雨でも降ってるの?」と訊ねた。
『釣りをしてるんだ』
「こんな朝から?」
まぁ、カイトなら有り得るか。
自分で言ったあと思い直すA。
昔から、彼は歳の割に老人のような時間の過ごし方を好む節があるとAは記憶している。
ジンと共に旅をする中、砂漠で何日も野宿をしたことがあったのだが、起きるといつも朝食が出来上がっていた。
一体カイトに何時から起きてるんだと聞けば、朝四時だと返ってくるではないか。
Aがまだまだ荒んでいた時代、荒っぽい口調で「ジジイかよ!!」と突っ込んだのを今でも覚えている。
殺しだけの箱に詰められ、ただそれだけを教えこまれ生きてきた自分にとって、カイトという人生で初めて出来た友人はAの人生に大きく影響を与えた。
懐かしいな、三人で旅してたの。
『そんなに言うなら、来るか?』
耳に入ってきたカイトの言葉に、Aは目を丸くして「えっと…私声出てた?」と探るよう訊ねると、なんてことない声で『いいや。だが、沈黙はどうせ感傷に浸ってるんだろうなと思ったまでだ』と返された。
確かに、大当たりだ。
「来るかって……カイト今どこにいるわけ?」
ただの釣り堀じゃないでしょ。
『カキン国』
ざぶ、電話口の向こうで釣竿が上がる音が鳴る。
『アイジエン大陸中央の国だ。そこで生物調査をしている』
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鼻毛太郎(プロフ) - めもめもさん» コメントありがとうございます!😭ここからはしっかりゾル家姉にも働いてもらって……と考えています!ぜひ、活躍お見逃し無く楽しんで頂ければ幸いです!🤍 (3月31日 10時) (レス) id: 642d1e8526 (このIDを非表示/違反報告)
めもめも - つづき気になりすぎてやばいです笑早く読みたいです✨ (3月31日 0時) (レス) @page38 id: 4f69df3854 (このIDを非表示/違反報告)
鼻毛太郎(プロフ) - あめみやさん» 嬉しいお言葉ありがとうございます!!😭🙌原作があるところまでとはなりますが、長々と続けていきますので是非以降もお楽しみください🤍 (3月21日 16時) (レス) id: 642d1e8526 (このIDを非表示/違反報告)
あめみや - 今までで読んできた中で一番良い作品でした!これからも更新楽しみにしてます! (3月21日 15時) (レス) @page36 id: ca00368d0e (このIDを非表示/違反報告)
鼻毛太郎(プロフ) - マニ。さん» コメントありがとうございます。返信させて頂きましたので、そちらご参照頂けますと大変助かります。 (2月18日 16時) (レス) id: 642d1e8526 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:鼻毛太郎 | 作成日時:2024年1月23日 17時