692：幼い記憶 ページ46
＿＿＿＿。
「お前さんは、優しい子じゃな」
ネテロ先生は、幼い私の前に点てたばかりの茶を出して言った。
幼い頃、私は暫くの間ネテロ先生のもとに通い念のコントロールを習いに行っていた時期があった。
『エデン』の使い方を誤った数日後、ゼノ爺ちゃんに連れられてこの老人のもとを訪れた事が始まりだ。
あの日から、私は約一週間程高熱で寝込んだ。
その間に、家族達は私の処遇を議論して、ネテロ先生に視て貰う事に結論づけたらしい。
「ワシの旧い友人じゃ」
そう爺ちゃんに紹介された。
初めて、家族以外に話す大人。
あらゆる情報を統制されてきた私にとって、この老人は未知の存在だった。
ネテロ先生との時間は、殆どがただ会話をするだけであった。
「ワシは、友達が少なくてな。ワシと友達になってくれんかのう。そうじゃ、まずは今日あった出来事を話してくれんか？」
そんな話をする毎日が始まった。
生まれて初めて、友達ができた。
「今日、初めてお葬式見た」
ほう、とネテロ先生は長い眉を興味深そうに開いた。
水差しから柄杓で水を掬いながら、ネテロ先生は「それで？」と私の話を優しく訊ねる。
「土を掘って、その中に箱を入れてたの」
「あぁ、土葬の最中だったんじゃな。ということは、墓地でも通ったというわけか」
「うん。父さんと、お仕事のあと」
いっぱい、皆泣いてた。
俯く私の前に、ネテロ先生は点てたお茶を出した。
ネテロ先生がだすお茶は、いつも少しだけ温かった。
本当は、訓練してるから熱湯だって平気だったのに。
火傷なんて、よくある話だから。
そう言うと、ネテロ先生が「友達の火傷は見たくないじゃろ」と呆けた顔をして言ったっけ。
確かに。今の私ならわかる。
「悲しくなったのか？」
「…わかんない」
「じゃあ、俯くことないじゃろ」
お茶菓子を出しながら言う。
うさぎの練り切りと丸くて黄色い落雁。
そうか、あれも九月か。
「考えちゃ、いけないから」
「ん？」
「殺し屋に、そんなの必要ないから。だから、考えちゃいけないの」
そう私が零すと、ネテロ先生は「ふむ」と顎髭を撫でた。
「お前さんは、優しい子じゃな」
ネテロ先生は、笑った。
「お前さんがその答えを出すのは、もっとずっと先になるやもしれん。何故なら、考えるも考えないもどちらも正しいからじゃ」
ゆっくり、導き出すと良い。
いつか、俯かなくてもいい時が来るはずじゃよ。
ネテロ先生、私は＿＿＿＿、
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鼻毛太郎(プロフ) - めもめもさん» コメントありがとうございます！😭ここからはしっかりゾル家姉にも働いてもらって……と考えています！ぜひ、活躍お見逃し無く楽しんで頂ければ幸いです！🤍 (3月31日 10時) (
レス) id: 642d1e8526 (このIDを非表示/違反報告)
めもめも - つづき気になりすぎてやばいです笑早く読みたいです✨ (3月31日 0時) (レス) @page38 id: 4f69df3854 (このIDを非表示/違反報告)
鼻毛太郎(プロフ) - あめみやさん» 嬉しいお言葉ありがとうございます！！😭🙌原作があるところまでとはなりますが、長々と続けていきますので是非以降もお楽しみください🤍 (3月21日 16時) (レス) id: 642d1e8526 (このIDを非表示/違反報告)
あめみや - 今までで読んできた中で一番良い作品でした！これからも更新楽しみにしてます！ (3月21日 15時) (レス) @page36 id: ca00368d0e (このIDを非表示/違反報告)
鼻毛太郎(プロフ) - マニ。さん» コメントありがとうございます。返信させて頂きましたので、そちらご参照頂けますと大変助かります。 (2月18日 16時) (レス) id: 642d1e8526 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：鼻毛太郎
| 作成日時：2024年1月23日 17時
