686:暗躍 ページ40
____。
「という事で、そろそろこっちも動こうと思ってるの」
雨足が強くなる一方で、Aの足音は一切の音を消していた。
どうやって雨音や飛沫の音を殺して歩いているのか。雑踏の中じゃ誰も分からない。
「ヒソカ君のこと甘やかしすぎって、別に甘やかしてないわよ。イル、私はね。私が動いて一件落着になれば、どうだっていいの」
クラピカ君の思い通りにも、クロロの思い通りにもさせない。
この私に協力を申し出た時点でね。
Aは、電話の向こうにそうキッパリと吐き捨てた。
電話越しにイルミの呆れたため息が聞こえるが、気にしたって仕方がない。
「……クロロにだって、別に入れ込んでる訳じゃないわよ」
電話口からイルミの諭す声が聞こえる。
いつだって、彼はAが突っ走っていくのを引き止める係だ。
それが信頼からか縛りによるものか、幼少期からそれが当たり前であった二人には分からない。
「分かってる。ミイラ取りがミイラになるなんて事はない。ただ、」
Aは、雨を避けるようにコートのフードを被る。
「楽しい時間は長い方がいい。少なからず、誰だってそう思うでしょ」
言葉が返ってこなくなる。
よし、攻略。Aは唇の裏で呟く。
「そういうことだから、作戦開始で」
Aが告げると、イルミからは『分かったよ』とため息混じりに返ってきた。
二人の仕事なら二返事で了承するのに、彼はヒソカやクロロが絡むと渋るようになった。
まぁ、分からんでもないが。Aは苦笑いを浮かべる。
この二人が持ってくる話は、大体がぶん殴りたくなるぐらい面倒なものだからだ。
Aは通話を切ると、音のない足取りでその辺の路地裏に入り込みそして、ゴミ箱と剥き出しの配管を使って建物の屋上へとあがる。
「よっ、」
片手で屋上のへりを掴み、まるで猫ように屋上に立ち降りる。
こんなにも派手な行動をしているのに、民衆が一人も気づいていないのはAの長年の暗殺スキルの賜物だ。
「…」
見通しの悪い雨のベールと都会ならではの人々の多さ。
Aの双眸は、その中で的確に目星の人間を捉える。
旅団。
その中心で、一際鋭くも飄々とした空気を纏う男。クロロ。
「暗殺は難しいだろうなぁ…」
例えば、今あの男の寝首を掻かなくてはならないとして。
なんとなくプランを立ててみるのだが、その中にマチが居る時点で踏み留まるだろうなとAは思う。
「ま、そもそもそんな依頼断るけど」
1218人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
鼻毛太郎(プロフ) - めもめもさん» コメントありがとうございます!😭ここからはしっかりゾル家姉にも働いてもらって……と考えています!ぜひ、活躍お見逃し無く楽しんで頂ければ幸いです!🤍 (3月31日 10時) (レス) id: 642d1e8526 (このIDを非表示/違反報告)
めもめも - つづき気になりすぎてやばいです笑早く読みたいです✨ (3月31日 0時) (レス) @page38 id: 4f69df3854 (このIDを非表示/違反報告)
鼻毛太郎(プロフ) - あめみやさん» 嬉しいお言葉ありがとうございます!!😭🙌原作があるところまでとはなりますが、長々と続けていきますので是非以降もお楽しみください🤍 (3月21日 16時) (レス) id: 642d1e8526 (このIDを非表示/違反報告)
あめみや - 今までで読んできた中で一番良い作品でした!これからも更新楽しみにしてます! (3月21日 15時) (レス) @page36 id: ca00368d0e (このIDを非表示/違反報告)
鼻毛太郎(プロフ) - マニ。さん» コメントありがとうございます。返信させて頂きましたので、そちらご参照頂けますと大変助かります。 (2月18日 16時) (レス) id: 642d1e8526 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:鼻毛太郎 | 作成日時:2024年1月23日 17時