665：雨音と体温 ページ19
その声があまりにも優しくて、Aを支配していたもの全てが溶けるように消えていった。
ボロボロと意識してもないのに涙は止まらず、汚れた口で何とか呼吸を整える。
その間も、ずっとヒソカはAの背を摩っていた。
Aの汚れた手が、摩っていないヒソカの片手を握っている。その握る自分の手がずっと震えているのにAは気づき、今の自分は正気でない事を自覚させた。
「ごめ、なさ…っ、」
「何が？」
優しく問う。
「片手、 吐いたの抑えた手で、握って…、」
「あぁ、それ？君って本当、律儀だねぇ…♤対した事じゃないだろ♧」
ヒソカは可笑しそうに喉奥で笑う。
ヒソカにとって、それはなんて事の無いA相手なら当然と思ってでた言葉であったのだが、それがAの心を無条件に救った。
一瞬、Aはぐしゃぐしゃの顔で呆気に取られた顔をした後、眉を八の字に寄せて、まるで泣き出す前の子供のように顔をくしゃりと歪めると声をあげてボロボロと涙を流した。
「こわ、かったぁ…っ！」
しゃくりあげて、嗚咽混じりに言葉を吐くAの姿は、ヒソカが出会ってから一度も見たことのない姿であった。強いて言えば、酔った時に意味不明にボロボロ泣きながら面倒に絡まれることがあったぐらいだ。
シラフの時に、子供のように泣いて弱音を吐く姿なんて見せられた事がない。
寧ろ、Aのことだ。
それを他人に見せるぐらいなら、首を吊って死ぬことを選ぶだろう。
「水と拭くものとってくるけど、それよりまず屋内に入ろうか。冷えるよ♤」
Aは、まだとめどなく溢れる涙を拭いながら何度も頷いた。
一心不乱に外に出てきたから気にもしていなかったのだろう。
廃ビルの外は、雷鳴が響き雨が降りしきっていた。
幸か不幸か、雨が吐瀉物を流していく。
しゃくりあげる音を聞きながら、ヒソカはAの手を引いて廃ビル内へと戻った。
誰もいない薄暗いロビーに、古ぼけたパイプ椅子が忘れ去られたように置かれていた。
「ここで待ってて♢」
ヒソカがAを座らせ言うと、Aは泣き腫らした目でヒソカを見上げた。
「そんな目で見上げるなよ♧…何処にも行かないし、すぐ戻ってくるからさ♤」
Aの頭に触れて言い聞かせる。
「タオルも必要か♢」と最後にヒソカは呟くと、必要なものを取りに行ってしまった。
誰もいない、仄暗いロビー。
Aはパイプ椅子の上で膝を抱えて、小さく蹲る。
後ろを振り向かないように、小さく。小さく。
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鼻毛太郎(プロフ) - めもめもさん» コメントありがとうございます！😭ここからはしっかりゾル家姉にも働いてもらって……と考えています！ぜひ、活躍お見逃し無く楽しんで頂ければ幸いです！🤍 (3月31日 10時) (
レス) id: 642d1e8526 (このIDを非表示/違反報告)
めもめも - つづき気になりすぎてやばいです笑早く読みたいです✨ (3月31日 0時) (レス) @page38 id: 4f69df3854 (このIDを非表示/違反報告)
鼻毛太郎(プロフ) - あめみやさん» 嬉しいお言葉ありがとうございます！！😭🙌原作があるところまでとはなりますが、長々と続けていきますので是非以降もお楽しみください🤍 (3月21日 16時) (レス) id: 642d1e8526 (このIDを非表示/違反報告)
あめみや - 今までで読んできた中で一番良い作品でした！これからも更新楽しみにしてます！ (3月21日 15時) (レス) @page36 id: ca00368d0e (このIDを非表示/違反報告)
鼻毛太郎(プロフ) - マニ。さん» コメントありがとうございます。返信させて頂きましたので、そちらご参照頂けますと大変助かります。 (2月18日 16時) (レス) id: 642d1e8526 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：鼻毛太郎
| 作成日時：2024年1月23日 17時
