657:言えない ページ11
____。
「どういうことだァ?引き上げるってのはよ」
雷鳴轟く中、ノブナガはクロロへそう訊ねた。
朝はあんなに天気が良かったというのに、今やこの悪天候だ。
あの時そのまま市場に行ってご飯買っといてよかった。
Aは、彼らの会話する様を眺めながら呑気にバゲットサンドを食していた。
カイトに心の内のもやを相談した以降、電話を切ると同時に突然空腹が襲ってきたのだ。
思えば、激しい戦闘をした訳ではないものの、それなりに『エデン』を昨日は使用し相応のカロリーを消費している。
悪夢を見たのは、もしかして空きっ腹に酒だけを入れたからか。
Aは思い立ち、その後一人で早朝の市場へと向かい、今現在三つ目のバゲットサンドを開封した所であった。
「A、ボクにもそれくれるかい?」
「食べかけでいいなら」
Aが半分ちぎって、同様に傍観していたヒソカに渡すと彼は受け取りながら「君の食べかけがいいの♡」なんてAから言わせれば“戯言”を述べながら受け取った。
「雲行き怪しいわね」
周囲から少し離れた廃材の上でバゲットサンドを齧りながら呟く。
「荒れそうだね…♧」
「面白くなりそうの間違いじゃないの?ヒソカ君、やけに嬉しそうだから」
「君の手を煩わせることになると思うと、申し訳なくて笑みが零れるよ…♤」
嫌味ったらしく喉奥で笑うヒソカに、まるで猫に虐められるネズミになった気分だとAは口を曲げた。
ふと、機嫌を損ねたAの頬を、ヒソカが手の甲でするりと撫でた。
「顔色、だいぶ戻ってきたね♢」
「え…」
「今朝方、かなり体調が悪そうだったからさ♤」
喉奥で笑い、撫でた手が頬から顎を伝い名残惜しそうに手を離す。
「…見てたの?」と、微かに声を潜めて訊ねたAに、ヒソカは「君が外から戻ってきた時ね」と返した。
本当は、魘されている時から気づいていた。
彼のついた嘘を気づかずか、それともわざとか、A はその先を聞くことなく「…『エデン』を久々に使いすぎたからよ」と返した。
Aも嘘をついている。
Aの頬に、長い睫毛の影が落ちる。
「…そっか♢」
その先を聞かぬヒソカに、Aは何も返せなかった。
「そんなにパン握り締めてると、パンじゃなくなるよ♧」
「うわっ!?嘘、なにこのサンドイッチであったであろう何か!!?」
悲しそうな顔でベコベコに平たくなったパンをもそもそ食べるAを他所に、ヒソカは貰った分を口に入れた。
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鼻毛太郎(プロフ) - めもめもさん» コメントありがとうございます!😭ここからはしっかりゾル家姉にも働いてもらって……と考えています!ぜひ、活躍お見逃し無く楽しんで頂ければ幸いです!🤍 (3月31日 10時) (レス) id: 642d1e8526 (このIDを非表示/違反報告)
めもめも - つづき気になりすぎてやばいです笑早く読みたいです✨ (3月31日 0時) (レス) @page38 id: 4f69df3854 (このIDを非表示/違反報告)
鼻毛太郎(プロフ) - あめみやさん» 嬉しいお言葉ありがとうございます!!😭🙌原作があるところまでとはなりますが、長々と続けていきますので是非以降もお楽しみください🤍 (3月21日 16時) (レス) id: 642d1e8526 (このIDを非表示/違反報告)
あめみや - 今までで読んできた中で一番良い作品でした!これからも更新楽しみにしてます! (3月21日 15時) (レス) @page36 id: ca00368d0e (このIDを非表示/違反報告)
鼻毛太郎(プロフ) - マニ。さん» コメントありがとうございます。返信させて頂きましたので、そちらご参照頂けますと大変助かります。 (2月18日 16時) (レス) id: 642d1e8526 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:鼻毛太郎 | 作成日時:2024年1月23日 17時