検索窓
今日:29 hit、昨日:35 hit、合計:15,219 hit

117:初めての五条クン28 ページ7

私は、夏油クンと君はいいコンビになれると思うよ。

Aはそう言った。

五条は言葉が出なかった。
アイツに俺の重さを背負わせられるのか。
潰れちまったら、俺はどうすんだよ。

誰かに押し付けてそいつが潰れるんなら俺は________、


「大丈夫だよ。一人で背負うより、二人の方が絶対に軽くなるから。それに、」


Aは、薄明かりの中笑みを浮かべた。
その笑みはまるで、星の瞬きのようだったのを五条は覚えている。



「人は沢山居た方が楽しくなるよ。そうでしょ、“悟”」



その時、初めて呼ばれた名前に心臓が大きく跳ねた気がした。
気じゃない。それは確かに跳ねたのだ。

呼ばれた名前に呼応するように跳ねたのだ。

何か、言わないと。

何とは浮かんでいないのに、咄嗟にそんな感覚に駆られた五条は宛もなく口を開きかけたその時。


突然、静かにしていた犬がむくと起き上がった。
そして、急ぎ足で部屋の隅の方に向かっていったのだ。

Aと五条は互いに顔を見合わせた。
犬は、何やら部屋の隅をガリガリと前足で掘っている。
まるで何かがそこにあるみたいに。

なんて思ってる矢先、突如として犬の掘る足元がガコンと音を立てた。
岩が砕ける音ではあるのだが、どこか少しだけ音に軽さがあったのは、その穴が恐らく最初から意図的に開けられたものであったからだ。

「シバフ…!元気か!?」

まだ高い少年の声。
それよりも、言葉にあった『シバフ』という単語にAは「シバフ?」と首を傾げた。

一方、その声にいち早く反応したのは、犬ではなく五条であった。

「ああ!?テメッ、この、クソガキこらァ!!??」

部屋の隅にぼこりと開いた穴。
そこから差し込む、外の世界の眩しすぎる光など気にも留めず、五条はその穴に片手を突っ込むと向こう側にいる少年____恵比寿の胸ぐらを掴んだ。

「ひ、ひぃ!!?あ、ああ、ゆ、許してぇ!!」

「なぁにが『ひぃ!許してぇ!』だ!!テメェのおかげでなぁ、こっちは暗闇の中で散々だったんだよ!!ノイローゼになったら責任取れんか、あァ!!?」

チンピラ宜しく怒り狂うも、片手程度しか入らない穴に顔を寄せ、外の恵比寿に凄む体格のデカい男の滑稽さと来たら笑うどころか憐れみさえ抱く。
五条の横では、興奮した犬がバウバウと吠えて、時折五条が「なんだァ?テメェのご主人様ってかァ!?」と犬にまで睨みを利かす。

Aはため息をつくと、程なくして「やめんか」と五条の頭を殴った。

118:初めての五条クン29→←116:初めての五条クン27



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 10.0/10 (146 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
1380人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

鼻毛太郎(プロフ) - ?さん» コメントありがとうございます!😭🤍強くてかっこいい傍若無人天上天下唯我独尊女ことギャル先輩、ぜひぜひ今後も彼女の活躍楽しみにして頂ければとっても嬉しいです!! (2月21日 18時) (レス) id: 642d1e8526 (このIDを非表示/違反報告)
?(プロフ) - ギャル先輩かっこよすぎます😿💖 続き楽しみにしております🎶 (2月21日 13時) (レス) @page16 id: 0c670390f5 (このIDを非表示/違反報告)
ぴーまん - ありがとうございます💗💗時間なんていっくらかかっても大丈夫です!!!ほんとありがとうございます🫶 (11月11日 11時) (レス) id: 0fb8342324 (このIDを非表示/違反報告)
鼻毛太郎(プロフ) - ぴーまんさん» ぴーまんさん、改めてありがとうございます!🙌前回コメント頂いた際に知識不足でお答え出来ませんでしたので、ぜひこちら書かせて頂きます😭お時間少々頂きますが、暫しお待ちください…!短編で書かせて頂きますね…! (11月10日 17時) (レス) id: 642d1e8526 (このIDを非表示/違反報告)
ぴーまん - リクエストすみません!🙇‍♀️🙇‍♀️無理だったら全然だいじょぶです👍🏻 (11月10日 15時) (レス) id: 0fb8342324 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:鼻毛太郎 | 作成日時:2023年10月21日 4時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。