【呪術廻戦】呪術とギャル-0.6-

116：初めての五条クン27 ページ6

それで、喧嘩が故にカッとなって思わず帳を降ろし忘れ、尚且つそれで器物破損を巻き起こし一般人にも目撃をされ通報となり、今朝の報告書だと五条は語った。

Aは彼の言葉を、たまに相槌を打ちながらそれ以上の言葉は挟まず聞いていた。

「なるほどね」

五条の言葉が終わっても、Aは一切茶化さなかった。
なぜなら、彼は自分がある程度どのくらいの今の日本を背負い、どのくらい自分が世界に影響を及ぼしているのかを理解した上で思想を述べているのかを察したからだ。

きっと、Aの知る上層部よりの人間達が聞けば、皆揃いも揃って五条の意見が当然だと言うだろう。
しかし、同時にそれは五条が如何にして育てられたのかを裏付けることでもあった。

「ま、こんな話してもテメェには分かんねーだろ、」

「いや、五条クンの言ってることは間違ってないよ。結論から言ってさ、正しくは五条クンも夏油クンも間違いではない」

「…」

「現実的なのは、五条クンの方。でもさ、五条クン。さっき君、エビクンのこと殴っただけで終わらせようとしたでしょ。それって、夏油クンの理想論が内心一番ベストであると思ってるからだよね」

それは無理だとしても、無理なだけでそうであって欲しいと思うのはまた別の話。
少年漫画なら、そうであるべき。そういう展開を書くべき。
でもそれは、フィクションだから感動が生まれて結果良かったねなんて展開に持ち込むことが出来る。

現実は非情だ。

馬鹿で能天気でアホ女と五条は思っていたのだが、Aという人間は見た目に似合わず案外理知的なのかもしれない。

「それ、めっちゃいい解決法私知ってるよ」

「は？」

顔を顰める五条に、Aは得意気に笑って言ってみせる。



「片方が相手の気を引いて、もう一人が奇襲をかければいい」


「お前めちゃくちゃ性格悪いな」

思わず五条は口走る。
少年漫画ならすぐさまヘイトをかう展開だ。
しかし、Aは平然とした顔で「だって、そういうことじゃん」と述べた。

「君の悩みって、基本“二人”いれば解決できるよ」

Aの言葉に、五条は狼狽えた。
まるで当たり前みたいに言うけれど、お前それは。
俺が誰かに背中を預けるように、相手は俺の背中を護るってことになるんだぞ。


出来る出来ないじゃない。
相手はその重みに耐えられんのかよって話だ。


「何も難しくないよ。君がもっと人に背負わせればいい。もっと言うと、君の重さを背負える人間を探せばいい」

117：初めての五条クン28→←115：初めての五条クン26

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す