122:初めての五条クン33 ページ12
恵比寿はもう限界だった。
迫り来る老婆の声。
Aの瞳は何があっても恵比寿から逸らされない。
緊張感に、もはやどうすることも出来ず固唾を呑むしかない五条。
この空気の中、シバフが短く「わふ!」と吠えた。
信じている。自分の主を。たった一人の家族を。
犬は、家族を裏切らない。
痛いほど拳を握り、恵比寿は押し殺していた気持ちを吐き出した。
「シバフと…っ、シバフともっと一緒に________生きたいよ…ッ!!!」
その時、吐き出された恵比寿の本音を前にして、五条はAの瞳に強い光が灯るのを見逃さなかった。
コイツ……。五条の唇の裏で言葉が零れる。
同時、放たれた恵比寿の声はすぐに老婆の耳に届いたようで、ドタドタと足を早めて老婆がやってきた。
あまりの気迫に、驚いたシバフが激しく吠え出す。
「クソガキィ、お前ここで何してんだあぁ゛!!?」
鬼の形相で走ってきた老婆は、片手に研がれたばかりの包丁を携えていた。
自分を見つけただけで、首根っこを掴まれたという訳では無いのに恵比寿は短く悲鳴を漏らしてその場に尻もちをつく。
そのぐらいの気迫が今の老婆にはあったのだ。
まるで、ボケた優しげな老婆は最初から仮面であったように。
「エビクン…!」
老婆が向かってくる音を前にして、Aが小さく恵比寿を呼んだ。
「あのババァに『中の様子がおかしい』ってだけ言いな…!」
突然述べられたAの言葉に、恵比寿は「え…?」と不可思議な顔を浮かべた。
それは一体。しかし、Aはその言葉の意味を話してはくれない。
ただ一言、最後に付け足したのだ。
「それを言うだけでいい。________あとは、全部私らがなんとかしてやる」
南国の海のような、翡翠色の瞳が恵比寿の中で一際強く輝いた。
まだ、A達は自由を取り戻していないのに。
籠の中の鳥であることは間違いないのに。
だが、Aの言葉を聞いた恵比寿は不思議と思ったのだ。
この人達なら、本当に何とかしてくれるかもしれない…!
そう思った時には、もう恵比寿は口走っていた。
胸ぐらを掴み、鬼の形相で詰め寄る老婆にハッキリと。
「中の、っ、中の様子が可笑しいんだ…!!」
「あぁ゛?」
片眉を訝しげにあげて、老婆は言葉通りに中の様子を見てやろうと穴を覗き込みそして____、
「な、なな、な、何しとんじゃ小娘ェ!!???」
五条に馬乗りになり、彼の顔面をぶん殴る女がそこにいた。
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鼻毛太郎(プロフ) - ?さん» コメントありがとうございます!😭🤍強くてかっこいい傍若無人天上天下唯我独尊女ことギャル先輩、ぜひぜひ今後も彼女の活躍楽しみにして頂ければとっても嬉しいです!! (2月21日 18時) (レス) id: 642d1e8526 (このIDを非表示/違反報告)
?(プロフ) - ギャル先輩かっこよすぎます😿💖 続き楽しみにしております🎶 (2月21日 13時) (レス) @page16 id: 0c670390f5 (このIDを非表示/違反報告)
ぴーまん - ありがとうございます💗💗時間なんていっくらかかっても大丈夫です!!!ほんとありがとうございます🫶 (11月11日 11時) (レス) id: 0fb8342324 (このIDを非表示/違反報告)
鼻毛太郎(プロフ) - ぴーまんさん» ぴーまんさん、改めてありがとうございます!🙌前回コメント頂いた際に知識不足でお答え出来ませんでしたので、ぜひこちら書かせて頂きます😭お時間少々頂きますが、暫しお待ちください…!短編で書かせて頂きますね…! (11月10日 17時) (レス) id: 642d1e8526 (このIDを非表示/違反報告)
ぴーまん - リクエストすみません!🙇♀️🙇♀️無理だったら全然だいじょぶです👍🏻 (11月10日 15時) (レス) id: 0fb8342324 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:鼻毛太郎 | 作成日時:2023年10月21日 4時