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121:初めての五条クン32 ページ11

老婆の気配にシバフが低く唸る。
五条は小さく舌打ちを漏らした。
体術は別に出来なくはない。そのぐらい、勿論教育済みだ。

だけど、相手の使う術式は?
もう一人の老父は何を使う?
不確定要素が多すぎる。

初めてだ。生きてて、負けの可能性を想像するのは。
負けとは即ち死を意味する。俺が死ねば、全ての均衡が崩れる。

俺が怒ってんのは、そもそもこの恵比寿のためか?
嵌められた根源があのババァ共だからか?
俺の矜恃が傷つけられたからか?

くそ、こんなクソみてぇな状況が故に頭の整理が追いついてねぇ。

「お願いだから、逃げてください…!」

恵比寿は、早くと懇願する。
Aだけが、この状況で静かであった。

砂利の音が大きくなっていく。
声が近づいてくる。

「ダメだ、僕が時間を稼ぎます、だから、」

「エビクン。君、死ぬ覚悟出来てんの?」

「え…」

何を、言っているんだこの人は。

「君、まるで囮になって死ぬみたいなこと言ってるけど、覚悟出来てんの?」

突然、脈絡もなく述べだしたAの言葉に、恵比寿は困惑していた。
無論、五条もだ。常々頭のおかしい女だとは思っていたが、ここまでおかしいと恐怖さえ覚える。
「何言ってんだよお前」と、Aへ声をかけようとしたが、Aの言葉がすぐにそれを遮ってしまう。

「君が覚悟出来てるってんなら、私がここから手伸ばして君の首へし折ってやろうと思ってる」

「な…、」

「別に良くない?君、罪を償うために死んでもいいと思ってんでしょ?」

「待てお前、お前言ってること支離滅裂だぞ!?話聞いてたか!?」

「五条クン。次に私に口出ししたら、君の片足を折る。いいね」

五条は思わずゾッとした感覚を覚えた。
Aの表情は見えていないが、その言葉はただの脅しではないと声色だけで察したからだ。

なんなんだこの女は。なんなんだよこのイカれ女は。
尖ってるなんてレベルじゃない。
俺が出会ったどんな人間よりも、ぶっちぎりでイカれてやがる。


こいつ、本気だ。


Aの出す気迫に、恵比寿は押されていた。

「だって…、でもっ、でも…!そしたら、どうやって逃げるんだよ…!今ここで僕を殺したら囮は、」

「なんでシバフは生かすのに、てめぇの頭にはてめぇが生きてていいって解答はねぇんだよ」

恵比寿が言葉を呑み込む。

「質問変えてやるよ。生きたくねぇのか、生きてぇのか。言え」

Aの横で、シバフは恵比寿を見つめていた。

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鼻毛太郎(プロフ) - ?さん» コメントありがとうございます!😭🤍強くてかっこいい傍若無人天上天下唯我独尊女ことギャル先輩、ぜひぜひ今後も彼女の活躍楽しみにして頂ければとっても嬉しいです!! (2月21日 18時) (レス) id: 642d1e8526 (このIDを非表示/違反報告)
?(プロフ) - ギャル先輩かっこよすぎます😿💖 続き楽しみにしております🎶 (2月21日 13時) (レス) @page16 id: 0c670390f5 (このIDを非表示/違反報告)
ぴーまん - ありがとうございます💗💗時間なんていっくらかかっても大丈夫です!!!ほんとありがとうございます🫶 (11月11日 11時) (レス) id: 0fb8342324 (このIDを非表示/違反報告)
鼻毛太郎(プロフ) - ぴーまんさん» ぴーまんさん、改めてありがとうございます!🙌前回コメント頂いた際に知識不足でお答え出来ませんでしたので、ぜひこちら書かせて頂きます😭お時間少々頂きますが、暫しお待ちください…!短編で書かせて頂きますね…! (11月10日 17時) (レス) id: 642d1e8526 (このIDを非表示/違反報告)
ぴーまん - リクエストすみません!🙇‍♀️🙇‍♀️無理だったら全然だいじょぶです👍🏻 (11月10日 15時) (レス) id: 0fb8342324 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:鼻毛太郎 | 作成日時:2023年10月21日 4時

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