【H×H】赤ちゃんはどこからくるの？-13-

604：派手にやれ ページ8

ネオンがこちらを不思議そうに眺めてくるのも分が悪く、仕方が無いので腹を括ると同時に、ころりと表情をバーの店員のお姉さんに作り替える。

「ありがと」

別の国の言語でそう言って、札にちゅと音を立てキスをしてみせるとそのままひらりとカウンターの奥に去っていった。

イカした綺麗なお姉さんにすっかり魅了されてしまったネオンは、半開きの口とキラキラした瞳で彼女の背を追う。
そして、Aが裏に消えていった途端、前のめりになってクロロへ「な、ナンパしたの！？」と興奮気味に訊ねた。

「声をかけたら別の国の人だった。言語が分からなくてね、申し訳ないからチップだけ渡してしまったよ」

クロロは肩を竦めて、言葉が分かったらなぁなんて呟く。
すると、ネオンは可笑しそうに肩を揺らして「もう、ナンパしちゃダメって言ったのに。結局してるんじゃない」と少女らしい笑いを漏らしてみせたのだった。





それが、彼女の能力が失くなる数十分前の出来事。



















トイレの外が騒がしい。
男達が張り上げる大声の中に、騒がしくドタドタと走る音が混ざる。

物騒になりだしたセメタリービル内とは裏腹に、女子トイレでAは悠長に着替えを済ませる。
適当に調達したバーの制服をトイレの扉にひっかけ、Aはトイレの個室から出てきた。

「あら、ビルだけじゃなくて外も騒がしそうね」

旅団が動き出したかな。
Aは、誰に聞かせるでもなく呟いてフラットシューズのつま先で床をとんとんと叩く。

「さてと、じゃあ私も一応旅団探しの仕事しようかしらね」

歩み出すと、深すぎるスリットから透けるほど白い足が覗く。

「あれからクロロ、あの子と二人で出ていったけど…騒がしいってことはそういう事よね」

どうにかして能力を奪ったのだろう。
どこかで殴ったか、いや彼の性格だと戦えもしない女を殴るなんてことはしなさそうだな。

「私みたいな戦わないと殺されるような女は別として」

Aは呟きながら、ガラス張りの壁から階下を見下ろすと、下の方で何度も光が弾ける光景を捉える。

「おぉ、やってるやってる」

隠密の自分だからこそ、あの派手な襲撃加減は少し憧れるものもある。
あっちに参加するのもまた面白かったのでは、と頭をよぎってしまう。

「ま、私って美人だけど目立つのは好きじゃあないし、本業にも響きそうだものね＿＿＿＿と、」

悠長に眺めている中、ふと後頭部に何か冷たいものが押し付けられている。
銃口。

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