645:白々明けの朝 ページ49
とはいえ、そんなことをするつもりもない。
皆死んでしまえば、短い間だがそれなりに悲しい。
それに、その中の一人であるマチは大切な女友達だ。
Aは、缶の山からまだ空いていない飲料水を見つけると、外へと向かった。
途中、毛布がはだけているマチを見つけたので、毛布をかけ直してやると「…ん、A…?」と薄く瞼を持ち上げた。
「寝てていいよ」
ぽんぽん、と毛布の上からマチの胸元を軽く叩くと、マチは再び瞼を閉じてしまった。
朧気な意識とAの存在が混濁しているのだろう。
起こすつもりは無い。
今は、誰も連れて行きたくない気分なんだ。
夜明け前の白む空気にAは身を埋めていく。
出ていくAの姿に、二名だけ気づいている者がいた。
一人は、ヒソカだ。
彼はA一人では無い時以外、眠りが浅い。
Aと過ごすようになってからは、不思議と無防備にも爆睡している事が多く、殆ど朝の強いAが先に目覚めている事が多いくらいだ。
ヒソカは、Aが魘されている時から目を覚ましていた。
最初は、ガッチリ巻かれた毛布に苦しんでいるのかと思ったが、すぐに違うことに気づいた。
これでヒソカは、Aが魘されている所を見るのは三度目になる。
もう一人はクロロだ。
クロロは、Aが魘されていたから目覚めた訳ではなく、別の理由で元々目が覚めていた。
そこへ、偶然Aが魘されている現場に鉢合わせたというわけだ。
Aが完全に外へ出たのを見払うと、互いに目覚めていたことに気づいていた二人は対角の距離で視線を交わらせた。
あれは? クロロの瞳が訊ねる。
その問いに、ヒソカはただ首を横に振るばかりであった。
Aは、まだ一度もこの夢についてヒソカに話していないのである。
廃ビル郡の中でコール音が鳴る。
以前、携帯を破壊したおかげで携帯番号ごと変わってるのだが、彼は出てくれるだろうか。
朝方だし出てくれないかもしれない。
携帯を片耳にあてがいながら、Aは廃ビル群の景色を眺め待つ。
数秒後、電話口から懐かしい声が聞こえた。
「…もしもし」
こちらを伺うような声音で述べた言葉に、Aは通話主とは真反対に微かに声を弾ませ「もしもし」と返した。
「私…えっと、Aだけど」
すると、通話主はあからさまに驚いた声音で「A?」と言葉を反芻させた。
やはり、変わらない声音にAは自然とはにかむ。
「そう。久しぶり、カイト」
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マニ。(プロフ) - 鼻毛太郎さん» ✉️。こっちのHUNTER×HUNTERの作品も最高に好きです!ヒソカと夢主ちゃんがいつ結ばれるのかも楽しみです💖 (2月18日 13時) (レス) id: f769238e4f (このIDを非表示/違反報告)
鼻毛太郎(プロフ) - 伊波トウナさん» コメントありがとうございます!🙌かれこれ今年で4年となる、まるで作者耐久レースでもしてんのかってぐらい長期連載ですが、俄然暗黒大陸までやる気ですのでぜひ気長にお楽し頂ければ幸いです!!🩷️💙 (1月12日 19時) (レス) @page44 id: 642d1e8526 (このIDを非表示/違反報告)
伊波トウナ(プロフ) - とても面白くて一気見してしまいました!本当に面白かったです!続きが今も更新されてるって知った時マジでガッツポーズしました。更新頑張ってください!楽しみにしてます! (1月12日 18時) (レス) @page44 id: ce08f5279c (このIDを非表示/違反報告)
鼻毛太郎(プロフ) - 好き好き症候群さん» コメントありがとうございます!😭🤍文字量も章も多いというのによくぞここまで…!ペースはまちまちなのですが、更新は続けていきますので是非また遊びにいらしてください😌 (1月6日 10時) (レス) id: 642d1e8526 (このIDを非表示/違反報告)
好き好き症候群(プロフ) - コメント失礼します〜!先程、作品を読み切ったのですが最高でした😖😖文章もかなり凝っていて、読みやすかったです!久しぶりに神作品に出会えて嬉しいです🥲🥲更新を楽しみに待っています🙇 (1月6日 8時) (レス) id: da48891b6d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:鼻毛太郎 | 作成日時:2023年10月15日 14時