【H×H】赤ちゃんはどこからくるの？-13-

642：神域 ページ46

「姉さん、俺それ見たい」

イルミの無邪気な発言に、女執事は唇の裏で「うーん、それは無理かなぁ」と呟いた矢先。


「いいよ！見せてあげる！」


Aが声高らかに言ったのだ。

一体何を言っているんだ。
女執事が不思議に思った途端、彼女の体を異常な寒気が襲った。
それはまるで、後ろから得体の知れない獣が自身をじっと見れているような。後ろを向いてはならない感覚。
本能が危険信号を鳴らしている。

なに、これ。


「『エデン』、お花咲かせてー！」


少女の無垢な声が温室に響き渡ると、辺りの草木が妙にざわつき始めたのだ。
そして、次の瞬間女執事は目の前の光景に戦慄した。



目の前で、いやそれどころか周囲で、咲いていなかった花々が急速に成長を負え花を咲かせているではないか。



女執事は目を見張り周囲を見渡す。
これは、まさか。

「念…？」

そんなことあるわけない。
この二人が念の習得段階に入ったという報告はないし、四大行すら覚えた話もない。

じゃあこれは、なんなの。


「ね、こうやって咲くの」

「うーん…早すぎてよく見えなかった」

咲いた花を囲み、おかしなことなど何もなかったよう会話する二人を女執事は緊迫した表情で瞳に入れていた。
気づくと、女執事は二人に喋りかけていたのだ。

「あ、あの…今のって、」

声をかけると、双子二人が同時に振り向き思わず圧倒される。
さっきまではたかが四歳児だと思っていたのに、認識された途端この緊張感はなんなのだろうか。

二人は、女執事を見るなり罰が悪そうな顔を見せた。
あぁ、そっかコイツ見てたんだ、と。

それが分かった女執事は、即首を横に振り「い、言いません！言いませんよ！！」と彼らに聞かせた。
すると、二人はパッと顔を明るくさせたのだ。
その顔は、やはり幼子そのものの表情であった。


どうやら、彼らの話を聞くにAの不思議な力を知っているのは、弟であるイルミだけであったらしい。

「これね、時間を早くする事ができるの！」

A曰く、何時から出来るようになったのか分からないという。そして、『エデン』という大きなライオンが時を早くさせてくれるのだとか。

まだ幼子であるAの説明は、どこまでが本当か分からなかったが、女執事にとって一つだけ確実なのは『Aは時を加速させられる』ということであった。




女執事は生唾を呑み込む。




小さな主の力に、女執事は目が眩んでいた。
彼女は執事として、禁忌を侵していたのである。

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